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春の訪れを告げる東大寺二月堂の修二会が今年も行われ、私も数度聴聞に伺いました。お水取りはテレビで流れる勇壮な松明の映像が象徴的ですが、昼夜を分かたず行われる多様な儀式やそれにまつわる物語、練行衆の所作や音楽性等、行法を興した実忠和尚の優れた芸術性や構想力に魅せられ、毎年遠方から熱心に通われる方もおられます。特に福井県小浜市とは、若狭の遠敷明神が地下水脈を伝って奈良まで香水を送ったという伝説に基づき、現在も姉妹都市交流が続けられています。
また火を用いる行法が多いことから、古代イランにルーツを持つ拝火教との類似性を指摘する研究者もあり、国境や宗教の違いを超えたスケールの大きさが、奈良時代の原初的・前衛的な気風を感じさせます。
日増しに勢いを増す「力ずくの正義」が立場の弱い人々を苦しめ続ける世界情勢の中、私たちも心ひとつに平和を祈りたいと思います。