市販薬の過量摂取（オーバードーズ）について

市販薬の過量摂取（オーバードーズ、OD）とは、薬局やドラッグストアで購入できる風邪薬、咳止め、鎮痛剤などの市販薬を定められた用法・用量を超えて大量または頻回に服用することを指します。くり返し服用するうちに同じ量では効かなくなる「耐性」が生じ、さらに量を増やすことで過量摂取に至る場合があり、薬に依存して自力でやめられなくなることもあります。

市販薬は正しく使用すれば治療に有効ですが、用法・用量を守らないと、眠気や一時的な多幸感といった軽度の変化だけでなく、重篤な意識障害、肝障害や腎障害、心肺機能の障害につながることがあり、最悪の場合は死亡することもあります。このため過量摂取は個人の健康被害にとどまらず、社会問題として深刻化しています。

市販薬の過量摂取（オーバードーズ）は主に10代〜20代の若年層で増加しており、社会問題となっています。高校生を対象とした調査では、市販薬を乱用した経験がある割合は高校生で約60人に1人、中学生で約55人に1人という結果が出ています。

背景には、いじめや虐待、親との関係悪化、学校での孤立など、家庭や学校で感じる孤独感や強いストレスといった「生きづらさ」があります。こうしたつらい気持ちを和らげたり気分を変えたりする手段として市販薬の過量摂取に頼る傾向があり、SNSでの情報共有により「いいね」による承認欲求が満たされるとの体験が、若者に広がる一因として問題視されています。

医薬品は安全に効果を発揮するために用法・用量が定められています。市販薬であってもその規定を守り、自己判断での増量や頻回の服用を避けることが重要です。

自分や周囲の人が市販薬の過剰な使用や薬への依存が疑われる場合は、早めに医療機関や薬剤師、相談窓口に相談してください。