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令和3年度デザイン経営セミナー開催記念 特別対談 ~延岡健太郎氏 × 近藤清人氏~

更新日:2022年3月17日更新 印刷ページ表示

(令和4年3月17日更新) 3月16日開催のデザイン経営セミナーは終了しました。

(令和4年3月1日更新) 後編を追記しました。

目次

デザイン経営セミナー開催記念 特別対談 ~延岡健太郎氏 × 近藤清人氏~

デザイン経営セミナーを開催しました

デザイン経営セミナー開催記念 特別対談 ~延岡健太郎氏 × 近藤清人氏~

新型コロナウイルス感染症拡大によって消費者の嗜好がさらに複雑化し、従来のビジネス手法では対応できない可能性が高まっています。こうした状況を鑑み、奈良市では「デザイン経営で再考する中小企業の経営戦略〜自社の信念・伝統をカタチにする経営セミナー〜」を開催するなど、中小企業経営者に有益な示唆を与える「デザイン経営」の考え方を広く普及推進しています。このセミナー開催を記念して、セミナー当日の登壇者お二人に「デザイン経営」をテーマに対談いただきました。

 
 
■延岡健太郎 

延岡氏

 1981年大阪大学工学部卒業。マツダ(株)入社、商品戦略担当。88年マサチューセッツ工科大学(MIT)経営学修士(MBA)、93年同経営学博士(Ph.D)。94年神戸大学経済経営研究所助教授、99年同教授。2008年より一橋大学イノベーション研究センター教授。12年より同センター長。18年より大阪大学大学院経済学研究科教授。専門は経営戦略、経営組織、技術経営。

 主な著作:『マルチプロジェクト戦略』(有斐閣)、『MOT[技術経営]入門』『製品開発の知識』『価値づくり経営の論理』『アート思考のものづくり』(以上4冊は日本経済新聞出版)。『Thinking beyond Lean』(FreePress 英語・フランス語・韓国語・中国語版)など。

 

■近藤清人 

近藤氏 

 株式会社SASI代表。1979年兵庫県丹波市生まれ。西日本を中心に100社を超える中小企業のブランド戦略に携わる。アイデンティティデザインという独自手法で、中小企業の価値を引き出す「デザイン経営」のサポートを行い、中小企業だからできる新たなデザイン経営の実践を続けている。さらに、中小企業のデザイン視点を広げるためのプラットフォームとして、カフェを通じたデザイン経営支援を行うBook cafe Doorを運営する。2018年5月に『強い地元企業をつくる 事業承継で生まれ変わった10の実践』(学芸出版社)を上梓。12月には事業構想大学院大学出版「人間会議」に寄稿。2020年神戸大学出版「働き方とイノベーション」に「『デザイン経営』で地元企業からの地域活性化」を寄稿。

 

デザイン経営 × アート思考

― デザイン経営とイノベーション ー

近藤さん:

 特許庁が2018年に提言した「『デザイン経営』宣言」では、デザイン経営は企業の「ブランド構築」と「イノベーション創出」に有効だとされています。そこでまず、消費者の嗜好が複雑化する中で求められる「イノベーション」について教えていただけますか。

延岡さん:

 今回のテーマであるデザイン経営にも引用されている「イノベーション」ですが、まずはイノベーションという言葉の一般的なイメージである「技術革新」と、「本当の意味でのイノベーション」との違いを考えなくてはなりません。この違いを一言でいうと、技術革新とはあくまで手段であって、本当の意味でのイノベーションとはユーザーがまだ気づいていない、社会にとって本当に役に立つ「価値を創出する」ということです。

 皆さんもご存知のAppleがイノベーション企業の代表例です。他社だと3〜4万円で購入できる機器が、iPhoneでは10万円でも買いたいという人がたくさんいます。これがイノベーションですね。この差は機能ではないのです。カタログを端から端まで見てもこの差の答えはありません。また、世界での販売台数のマーケットシェアは他社が9割近くを占めますが、営業利益ではiPhoneが9割を占めます。スマホゲームの数も圧倒的に他社の方が多い。それでも、多くの人が、とても高価なiPhoneを欲しがります。

 実はここが中小企業にとっても有利となるところなのです。例えば、同じトースターでもバルミューダのトースターは3万円でも欲しいとなる。それはバルミューダが経営者の哲学に基づきユーザーが本当に欲しい価値を貫いているからです。カタログスペックではなく、本当の意味での価値をつくるということなのです。これは今まで「技術」でユーザーに選ばれてきた大企業が苦手とする分野でもあります。

イノベーションとは

 

― ​中小企業も大企業と本当の意味で戦える時代が来た ―

近藤さん:

 なぜ技術だけでは本当の意味での価値をつくることができないのでしょうか?

延岡さん:

 いまだに技術だけを重視する企業が多くあります。例えば、AIや顔認証で世界一だと言ったとしても、結局は本当の意味でユーザーや社会の役に立っていないから業績が振るわない。それではなぜ技術だけではだめなのか。

 それはまず一点目に圧倒的に文明が洗練されてきたからです。安価なものであれば、ユーザーはスペックの比較だけで購入を決めます。一方で、車や時計・文房具・家具など全て同じですが、価格が上がるほど、機能だけではなくデザインや高級感、趣味性、創作者の思いなど、基本機能を超えた価値が求められます。それはブランドと言える部分も含まれますが、単なるスペックでは測れないところでの競争となります。

 二点目として、数字やスペックだけで勝負してもすぐに模倣されるので、結果的に顧客にとって大きな価値にならないことです。例えば、「家に帰る前にスイッチが入れられます」などと優位性を語っても、そのような技術は半年後にはどのメーカーも取り入れているわけです。皮肉っぽい話ですが、未だにスペックの横並びの競争をしている大企業もあります。

 

― ​重要度が増す意味的価値と、欲しいをつくる統合的価値 ―

近藤さん:

 技術だけではないとなると、本当の意味での価値を生み出すために何が大切だと考えたらいいでしょう?

延岡さん:

 技術・仕様・スペックなどの「機能的価値」だけではなく、それにプラスして「意味的価値」が非常に重要な要素となります。例えば、消費財であればワクワクする感性価値、生産財であれば顧客企業のコスト削減等生産性向上に結びつくソリューション価値のことです。ついつい機能やスペックで語り、機能的価値ばかりを狙いたくなりますが、そこに「体験」や「購入する意味」などの意味的価値が統合されて初めて「欲しい」になるのです。

 ただし、意味的価値だけが重要ということではありません。「モノからコト」へという言い方がよくされますが、モノもとても重要な要素です。これまでの話からすると逆説的に聞こえるかもしれませんが、バルミューダのトースターが3万円でも欲しいと思うのは、世界観などの意味的価値だけではなく、やはりトーストが美味しく焼けるから欲しいという事実もあるのです。それはダイソンやiPhoneでも同じです。モノの部分である圧倒的な吸引力があるからこそ買いたくなるのです。それが機能的価値と意味的価値を合わせた「統合的価値」です。機能や体験、デザインやブランドなど全てがものすごく複雑に融合しているのです。

 ですから「デザイン経営」というのも、一般的な解釈ではデザインの方だけが重要であるという印象がありますが、それは間違っています。ものづくりは技術の集積であり、クラフトマンシップがそこにあります。機能的価値も極めて重要であり、iPhoneやダイソンも機能的価値と意味的価値の両方を上手く合わせて統合的価値を創出している好例だと言えます。

競争環境の変化

 

― ​統合的価値をつくるSEDA(シーダ)モデルという考え方 ―

近藤さん:

 統合的価値をつくるために延岡さんが世界的に提唱されているSEDAモデルというフレームワークについて教えていただけますか?

延岡さん:

 SEDAモデルは、これまでにお話した機能的価値と意味的価値の概念を発展させたもので、横軸の機能的価値と意味的価値を縦軸の問題提起と問題解決により分けたフレームワークです。この左半分の縦軸の関係は「両利きの経営」で言われる、価値探索という0→1を目指す新事業模索と、価値深化という1→100を目指す既存事業の効率化や改善ということです。上側の部分は既存の考え方を破壊し既成概念から外れないとできない考え方で、下側の部分は既にあるものをどうすれば効率的にできるかという物事を深化する考え方です。

 機能的価値を上下に2つに分けるとサイエンス(S)とエンジニアリング(E)となります。一般的には、サイエンスは基礎研究部門で、エンジニアリングが事業部の商品開発という感じです。また、意味的価値を上下に2つに分けるとデザイン(D)とアート(A)に分かれます。顧客の要望に合わせた問題解決がデザインで、自社の哲学・アイデンティティを表現・問題提起するのがアートです。

SEDAモデル

 機能的価値も意味的価値も下側の問題解決は顧客のニーズに合わせてその要求に応えることです。まだ日本ではしっかりと根付いていませんが、「デザイン思考」という考え方と一致するもので、ユーザー調査を行いプロトタイプをすぐに作り、フィードバック調査を行いさらによくするなど、ユーザーの使いやすさや気持ちよさなどを追及するというデザイナーの仕事の仕方に基づいた思考法です。

 アート思考は顧客の想定を超えて0→1を目指すもので、ビジョンや哲学の領域となります。まだ誰も考えていない新しい提案をするというのが特徴で、ユーザーの声を聴いて実現するものではありません。ユーザーの声は顕在化しているものですので0→1にはなりません。ノーベル賞を取るような人はユーザーに「どんなものが欲しいですか?」と聞いて基礎研究をしませんし、ピカソがユーザー調査をしたという話も聞いたことがありません。それがアート思考です。

デザイン思考とアート思考の違い

 歴史的にアート思考の商品として一番成功したのはウォークマンです。ウォークマンの開発当時「電車の中で自分だけがヘッドホンをしているなんて恥ずかしい」などとネガティブな反応ばかりだったようです。それでもユーザーに欲しいものを聞くのではなく、「常に音楽があるという生活がこんなにいいんだ」という世界観を提案し、その結果世界中の人々がウォークマンに魅了されました。ユーザーの想定を超えて、新しい考え方や世界観などの意味的価値の提案に成功したと言えます。

 このようにアート思考にとって大事なことは自己を形成する「アイデンティティ」です。サムスンも「我々がAppleに唯一負けているのはここです」と言っていました。スティーブジョブズは「IBMやマイクロソフトなど普通のユーザーには使いにくいパソコンが主体であってはならない」という哲学を、シリコンバレーのアイデンティティである「自由」を生かして、世界に発信しました。ジョブズが掲げるアートな考え方はどんどん世界の文化を変えています。誰もが思い通りに使えてデザインも美しく幸せを感じる魅力ですね。

 日本企業は小手先のデザイン思考ではなく、日本の本当の良さを世界に発信するなど、日本のアイデンティティからなるアート思考のものづくりをすることが重要です。その日本の美意識を理解し、そのアイデンティティを最も強く持っているのは、やはり京都であり奈良だと考えています。詳しくは「アート思考のものづくり」に書いていますが、和紙や竹を使おうというような直接的な手法ではなく、深い部分に佇む日本の美意識や歴史に裏打ちされた哲学からなるものづくりを発信すべきであると考えています。そのアイデンティティを生かし、奈良市の中小企業が世界に発信し続けていかれることを期待しています。

 

― ​単にデザインを取り入れるだけではうまくいかない ―

近藤さん :

 私もデザイン経営を普及浸透させていく立場ながら、その概念をもう一度捉え直す必要があると感じています。なぜなら狭義のデザイン(モノのデザイン)、広義のデザイン(コンセプトやターゲット)、経営のデザイン(ビジョンや戦略)というようにそれぞれの領域はあるものの、それらを一貫した価値としてユーザーに提供することが求められているからです。しかし、デザイン経営という言葉の響きから、単に「デザイン」さえ取り入れれば良いと捉えられることがあります。しかし、それで事業がうまくいくとは限りません。

デザイン経営の領域イメージ図

 延岡さんはSEDA(シーダ)モデルのエンジニアリング(E)とデザイン(D)について「左脳」と「右脳」という表現をされていますが、「機能」という客観的・論理的な部分と、「意味」という主観的・感覚的な部分は、基本的には相容れない部分が多いと言えます。仮にデザインを取り入れたことによって商品がより売れるのなら良いのですが、そうでなければ「デザインを導入しても意味がない」となってしまいます。デザインとエンジニアリングは、どうしても顕在化した課題に対してそれぞれが解決策を提示した場合、対立する構造になってしまうのです。

 その構造に足りないものはサイエンス(S)であり、何よりアート(A)であると考えています。私も事業者支援の現場で感じることは、まだまだ経営者自身が「機能」「○○ができる」というエンジニアリング(E)の領域にいることが多く、「まだ誰も気づいていない違和感を解消したい」「未来を変革させたい」という執念にも似たアート(A)の領域に達している人がほとんどいないということです。そこに至るためには経営者自身の持つアイデンティティ(変わらない価値観)を認識する必要があり、独自の哲学を展開する必要性があると感じています。そこから経営者の世界観を広く、しかも瞬間的に伝えるために「デザイン」はあるのだと考えています。

 「デザイン」という言葉を日本語に訳すと「意匠」という意味ですが、この意匠の2文字を分解すると「意図を伝えるために、匠を凝らす(工夫をする)」という言葉になります。ここでの「意図」とは企業であり経営者のアイデンティティから生まれる価値観であると考えています。その価値観からなる社会変革を起こす未来像をビジョンといい、その価値観や未来像を理解し表現するのがデザイナーの役割であると私は考えています。社会や顧客はまだ気づいていないながらも、本当はこうありたいというアイデンティティは、経営者の思いつきではありません。それは、先代の後ろ姿や保有している技術、知財だけでなく、これまでの人生の中で培われて来たブレることのない価値観です。人生のさまざまな経験を養分として、なぜ自身のアイデンティティが形成されたのかを経営者とともにデザイナーが理解し、それを広めていく活動自体がデザイン経営に必要な要素であると考えています。

ビジョンによる事業展開

 もちろん、広めていく段階にはマーケティングや基礎研究としてのサイエンスの力も必要であり、ものづくりのエンジニアリングとともにSEDA全体として進める必要があります。この試行錯誤によって、経営者のビジョンに共感し、物やサービスに熱狂するファンである関係人口を増やしていくことを目指していきます。その真ん中にあるのはやはり、経営者のアイデンティティからなるアートであると考えています。しかし、現在のデザイン経営では、まだまだ「デザイン」を取り入れたらそれでいいという勘違いを生んでしまっているのではないでしょうか。​

 

延岡さん :

 「デザイン」という言葉の使い方がデザイン経営の問題点の一つです。デザインという言葉を使ってしまうと、どうしてもそのイメージに引っ張られてしまいます。SEDAモデルの優れているところは、デザインという言葉だけにこだわらず、4つの領域全てを組み合わせて本当の意味での重要な価値をつくるところにあります。例えば、魅力的な人間になりたければ、勉強することはとても大事なことですが、それだけではなく様々な教養や優しさ、さらには人間力を磨く必要があります。これと同じように企業経営においてもデザインだけが重要なのではなく、優れた機能も必要です。その中でも圧倒的に重要なのはやはりアート(A)です。

 近年SDGsの重要性が話題になることが多いと思いますが、これもアート思考が必要な領域となります。例えば、SDGsを象徴するブランドとしてアパレルメーカーのパタゴニアが有名ですが、同社の創業者が目指したのはオーガニックコットンを使用するなど地球環境に優しいサスティナビリティです。さらにはものづくりの技術もあり、それをデザインでうまく表現し伝えている。まさしくSEDAの好例です。

 

― アート思考は経営者のアイデンティティから生まれる ―

近藤さん :

 人間とは、急に産まれたわけではなく、さまざまな経験や人間関係、知識、これまで生きてきた環境や育った地域のことなど一貫して築いてきた価値観があります。市場調査により発見したニーズに合わせるのではなく、経営者のアイデンティティから生まれるアート、すなわち問いを設定することが重要であると考えていますが、どう思われますか?

延岡さん :

 やはり何より重要なのはブレない想いです。近藤さんのおっしゃる通り、経営者から急に強固な想いが出てくるのではなく、これまでの積み重ねや生い立ち、境遇など、歴史の部分がないとそこまで強い想いを発信できるとは思えません。さらに、アート思考を実践するためには必ず顧客が感動するところまでやりきることが重要です。アート思考は中途半端になると自己満足に終わり全く評価されないものになるので、決して妥協しないことが求められます。

近藤さん :

 事業承継の場面であったりすると、これまでの事業を大きく変革していくような局面となり、必然的に自社の在り方を見直す機会がでてきます。他方、そうした場面を経ずに自社の哲学を見直した事例もあります。例えばマツダの魂動(こどう)デザインが当てはまると思いますが、こうした強い哲学はどのような背景で生まれたのでしょうか。

延岡さん :

 魂動デザインは、ユーザーニーズから離れ、自動車の存在意義を見つめ直し、朝から晩まで年中、24時間ひたすら考え抜いた前田さん(当時の事業責任者)の執念がそうさせたのだと感じています。そして自動車というカテゴリーは意味的価値を評価されやすい分野であることも結果を出すのに手伝ったことは間違いないでしょう。先ほど例に出したパタゴニアも、アウトドアや登山の愛好家が環境への意識が元々高かったことから、評価が高まったのだと思います。

 

― デザイン経営やアート思考はあらゆる企業に活用できる ―

近藤さん :

 これまで消費財(BtoC)企業の例でお話されてきましたが、生産財(BtoB)企業にもアート思考を活用できるのでしょうか?

延岡さん :

 生産財(BtoB)にもアート思考は活用できます。例えばキーエンスは、高額でありながら付加価値の高い生産財を製造販売するメーカーとして有名です。工場はこうあるべきということを考え抜き、これまでの固定観念に囚われないことで業績を圧倒的に伸ばしてきました。中小企業も工場を持つプロなわけですから、どういう工場であれば本当に価値があるのか、そこで求められることは何で、どうあるべきかと問い続けることが重要です。そのあるべき姿を提案していく先に本当の意味での価値である統合的価値が生まれていきます。どこでも同じようなものを作れる社会になればなるほど、ユーザーニーズに合わせることに限界が出てくるのは間違いないですね。

近藤さん :

 我々もBtoBの事業者を支援することが多いのですが、どうしてもこれまでのOEM仕事の癖が抜け切らず、取引先のニーズを追ってしまうことが多いと感じます。正確にその仕事に向きあうことこそが価値であると信じているようです。しかし、キーエンスのように本質を見つめることによる価値を作り上げることが重要になっています。AppleやパタゴニアのようにBtoCだけがデザイン経営やSEDAを活用するべきものではなく、BtoBであっても根本を問い直すことによって必ず価値が生まれてくるのだと感じています。

延岡さん :

 アート思考は、ユーザーの期待を超えるということです。企業である限りは、その道のプロであるべきであり、BtoBであってもユーザーの期待を超えることを追求すべきです。キーエンスも元は小さい会社で、工場の製造ラインで使うセンサーが主力商品でした。当時から、顧客企業の現場を歩き回り、自社のセンサーの有益な使い方を徹底的に考え続けました。その結果、顧客へ大幅なコスト削減や品質改善など、生産性・利益が向上する提案ができるようになりました。顧客企業は大きな利益向上に結びつくからこそ高価でも喜んで対価を払います。ユーザーニーズを超えて、顧客の利益向上をもたらすソリューション提供です。コンサルティングと言っても良いですね。顧客が考えてもいなかった提案をするアート思考です。

 企業規模に関係なくプロとしてのあるべき姿であり「小さくてもあの会社に相談したい」と思ってもらえるようになります。部品を販売すること以上に、常に工場の理想を顧客と一緒に考え続けてきた結果ですね。だからこそスペックだけでなく、本当の意味での価値を生み出すためにもアート思考を活用し、デザインを利用しながら統合的な価値をまだ見ぬ顧客に伝えていく必要があります。

 大企業のトップは説明責任があり、数字や裏付けが必要なので分析や数値で表しやすい「機能的価値」は追求しやすい。一方で、アートやデザインのような「意味的価値」は分析や数字での証明・説明が困難なため、トップとしては取り入れにくいといえます。これが大企業からSEDAが生まれにくい背景となっています。この点、中小企業はオーナー経営者が多く、哲学をダイレクトに事業・経営に反映できるため、大きなチャンスが訪れているといえます。中小企業の経営者は是非、大企業にはできないイノベーションを自らの中から起こしてください。

 

デザイン経営をテーマにセミナーを開催しました

 奈良市では「デザイン経営」の考え方を普及推進するために下記のとおり経営セミナーを開催しました。

セミナーチラシ

開催日時

 令和4年3月16日 14時00分~17時00分

開催場所

 奈良県コンベンションセンター 205・206会議室
 (奈良市三条大路1丁目691-1)

参加者

 現地46名 WEB視聴69名 計115名

ダウンロード

 デザイン経営セミナーチラシ [PDFファイル/1.31MB]

 デザイン経営特別対談 [PDFファイル/890KB]

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