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[開催報告]令和3年度企業×障害者支援機関・支援事業所交流会
【終了しました】企業×障害者支援機関・支援事業所交流会について
当交流会の第1部では、障害のある方を取り巻く支援機関や特別支援学校の役割について、また障害者雇用に前向きな企業の好事例紹介についての講演会、第2部ではグループワーク形式で、「障がい者雇用を進める為にお互いに望むこと」をテーマに、企業・支援機関・支援事業所それぞれの立場からの意見交換を行いました。
当ページでは、第1部から株式会社近商ストア様の事例を、また、第2部からはグループワークでそれぞれの班から出た意見をご紹介致します。
■第1部 ~取組・活動の紹介~
~現場責任者や会社を大きく変えた都留人事部長のご活躍~
株式会社近商ストア 人事部長 都留 正男 氏
企業の取組事例として、株式会社近商ストアの人事部長 都留様よりご講演頂きました。
都留部長が人事部へ着任時、近商ストアの実雇用率は1.21%(法定雇用率は1.8%)であり、大阪労働局から是正勧告の可能性について言及されるほど改善が必要な状況でした。
そのような中、都留部長は障害者職業センターのご担当者からの、「一緒に障害者雇用を頑張ってみませんか」という前向きな言葉を受け、障害者職業センターのご担当者が東北地方で取り組んでこられた事例を参考に、雇用の推進に向けて職種開発等にご尽力されました。
その当時はまだ「障害者=身体障害者」というイメージが強く、さらにスーパーの業務は円滑なコミュニケーションを求められる職種であることから、雇用する障害者も必然的に身体障害者が主な対象となっていたそうです。
しかし都留部長は、各支店において身体障害者含む他の障害種別の方の雇用も進めるため、その後近商ストアにとって障害者雇用の大きな礎となる「人件費を就業店舗負担から本社負担に変更」という、障害者雇用を推進するための方針転換をされました。
採用および配属となった障害者の人件費を本社負担とすることで受入店舗の経済的負担を軽減すること、また配属された障害者の育成を受入店舗が行い戦力化することで店舗運営が円滑に進むこと、この2つのメリットが各現場にも徐々に浸透し、ひいては障害者雇用率を大きく引き上げる要因となったのではないでしょうか。
また、どのような業務なら障害者にお任せできるのかを確認すべく、都留部長自ら支店の現場に赴き調査を行い、まずは買い物カートの回収やカゴの整理業務に絞っての店舗実習をスタートされました。
その後も、実習生の適性を見極めながら、グロッサリー(加工食品)の品出し、魚のカット、農産物の量り売りによる袋詰めなど、高度な技術が求められる作業なども切り出されたそうです。
都留部長はこの講演を通して、実習受入について以下のポイントを伝えて下さりました。
・地道に受入を積み重ね、それぞれの特性やスキルを理解する
(実習を受け入れて初めてその人の働きっぷりが見えてくる)
・実習中は徐々にできる仕事を増やしていく
(まずは一週間しっかりと指導し、少しずつ手を放していく+与える仕事を増やす)
都留部長が上記のように試行錯誤し障害者雇用に尽力された結果、徐々に各現場の責任者の理解を得ることができ雇用率も上昇し、今では法定雇用率2.64%と、会社として非常に高い基準で雇用率を達成されております。
何年にもわたる都留部長のご努力が実を結び、このように数値として表れていることが分かります。
我々としても、近商ストア様のような企業が市内に増えることを目指し、障害者雇用推進事業に日々尽力していきたいと、改めて身の引き締まる思いとなったご講演でした。
■第2部 ~参加者の声~
第2部では、「障害者の雇用を進めるためにお互いに望むこと」をテーマにグループワークを行い、参加者の方からは以下のような声が上がりました。
【企業】
・同じ障害者でも、個人差があり、その特性によって仕事の調整が必要。
・障害特性やスキルに不安がある場合は、事前に訓練を重ねてから実習に参加して頂くとありがたい。
・一緒に働いている仲間が途中で障害者になるケースは稀にある。業務能力は有しているが、感情や体調の波のコントロールが難しく、どのような業務をお願いしたらいいのか悩んでいる。
・就業中、常に集中していてがんばりすぎていることがあるので、適度な休憩や職場の人とのコミュニケーションも必要である。
・就業前に障害者の特性を周知していないと、適任の業務が判断できない。
【支援機関・支援事業所】
・障害特性ならびに個人の性格をしっかり踏まえたうえで、個々人に合った支援(就労相談・職業紹介など)を行うことが必要である。
・各支援施設の一層の支援力向上を図るのが重要と思われる。
・就労後のケアにも力を入れる。企業と連携を密にすることにより、障害者がSOSを出せる職場作りを目指す。
・雇用率を上げることがゴールではない。やりがいをもって永く働くことがゴールである。そのためには、実習や業務の切出しが重要となってくる。
・自己肯定感をあげるような支援を心がけ、低い場合は成功体験を積んでもらうようにする。
・企業に対し、支援機関のサービス範囲の情報提供が不足している。周知できるよう、アクセスしやすい仕組みづくりを構築するべき。
上記のように、お互いが抱える疑問や課題を互いに共有し合い、相互理解を深めて頂くことができた貴重な場となりました。
産業政策課では今後さらに関係機関の交流の場を増やし、障害のある方の就労支援をより一層進めて参りたいと考えています。