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人身取引をなくしましょう
人身取引とは
人身取引(性的サービスや労働の強要等)は重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速・的確な対応が求められています。
これは、人身取引が、その被害者に対して深刻な精神的・肉体的苦痛をもたらし、その損害の回復は非常に困難だからです。
また、人身取引はしばしば国境を越えて行われる深刻な犯罪であり、人身取引の防止・対策の強化は国際社会が取り組むべき課題です。
『人身取引』について、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書」(以下「人身取引議定書」という。)第3条で定義されています。
〇搾取の目的で、下記の概要図のいずれかの手段を用いて、人をいずれかの行為をした場合に人身取引とみなされます。
※搾取の目的で18歳未満の児童に対し、概要図のいずれかの行為をした場合は、(1)~(6)の手段が用いられない場合においても人身取引とみなされます。
目的 |
手段 |
行為 |
---|---|---|
〇売春させて搾取することその他の形態の性的搾取 〇強制的な労働・役務の提供、奴隷化、隷属等 〇臓器の摘出
等を含む搾取の目的で |
(1)暴力その他の形態の強制力による脅迫 (2)暴力その他の形態の強制力の行使 (3)誘拐 (4)詐欺、欺もう (5)権力の濫用、ぜい弱な立場に乗ずること (6)支配的立場にいる者に対する金銭、利益の授受 (1)~(6)の手段を用いて人を |
A.獲得 B.輸送 C.引き渡し D.蔵匿 E.収受
A~Eする行為 |
人身取引(性的サービスや労働の強要等)とは
人身取引とは、女性やこどもを始めとした弱い立場にある人を、暴力や脅迫、誘拐、詐欺などの手段によって支配下に置いたり、引き渡したりして、売春や性的サービス、労働の強要などにより搾取する、「トラフィッキング(Trafficking)」とも呼ばれている犯罪です。
人身取引は具体的にどのようなものでしょうか
被害者の多くは社会的・経済的に弱い立場にある女性や子供たちですが、男性も被害者となり得ます。売春や性的サービスの強要などによる性的な搾取だけではなく、労働搾取や、臓器の摘出を目的とする場合もあります。こうした目的の下、被害者を売春することに限らず、被害者に暴力を振るったり、脅したり、だましたり、弱い立場にあることにつけ込んだりするなどの手段を用いて、被害者を支配下に置いたり、引き渡りすることなどが「人身取引」とされています。
また、暴力脅迫、詐欺などの手段が用いられた場合にはたとえ被害者が性的搾取や労働搾取されること、臓器を摘出されることに同意していたとしても、「人身取引」に該当します。
人身取引の具体例
【事例1】
被疑者は、出会い系サイトを通じて知り合った被害女性に対し、売春させることにより対償を得ようと考え同女性に暴行や脅迫を加えた上、不特定の男性を相手に売春させた。
【事例2】
被疑者らは、短期滞在の在留資格で入国させたフィリピン人女性4名を同人らが経営する社交飲食店に雇い入れた後、渡航費用名目で借金を負わせる、旅券を取り上げるなどして監視下に置き、不法残留させたままホステスとして稼働させていた。
【実例3】
被疑者は、実習実施者として受け入れていた複数の技能実習生に対して暴力を振るい暴言を浴びせ、技能実習生のぜい弱な立場に乗じて違法な時間外労働を行わせるなどした。
近年は、被害者に人身取引の被害に遭っていることを自覚させないような方法で管理・支配するなど、人身取引の手口がより巧妙になり、被害が表面化されにくくなっています。
身の回りに被害を受けている自覚がない又は被害を訴えることができない被害者がいるかもしれません。
皆さまの周りに以下のような人たちはいませんか?
・借金を理由に暴行・脅迫を受けたりして売春や性的サービスを強要されている。
・児童が売春させられている。
・売春で得た現金などを他人に渡している。
・外国人がパスポートを取り上げられたり、外出を規制されたりして働かされている。
・極端な低賃金(最低賃金未満)で労働強いられている。
・暴行や脅迫を受けたり、目の前で物を壊されるなど威圧されたりして労働を強いられている。
上記のような被害者と思われる人の情報を見聞きしたり、被害者から助けを求められた場合は、「匿名通報ダイヤル(0120-924-839)」で人身取引に関する情報を受け付けています。
人身取引に関する情報提供・相談窓口
都道府県警察
・緊急通報(電話):110
・警察相談専用電話:♯9110
匿名通報
・警察庁「匿名通報ダイヤル」:0120-924-839
出入国管理庁
・出入国在留管理庁「外国人在留総合インフォメーションセンター」:0570-013904 ※外国語対応
人権相談
・法務省「みんなの人権110番」:0570-003-110
・法務省「外国語人権ダイヤル」:0570-090911
参考資料
・令和6年7月25日人身取引対策推進会議
「人身取引(性的サービスや労働の強要等)対策に関する取組について(年次報告)」より引用