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JNOメンバー 宇野 由樹子さんインタビュー

更新日:2022年12月8日更新 印刷ページ表示

インタビュー JNOヴァイオリン奏者 宇野由樹子さん

2023年2月5日になら100年会館でリサイタルを開催される宇野由樹子(うのゆきこ)さんに、ヴァイオリンの魅力や今回のリサイタルの聴きどころ等を伺いました。

プロフィール

宇野由樹子さんの写真

東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業。東京藝術大学に2014年度度宗次徳二特待奨学金奨学生として首席で入学。2015年より渡欧、ザルツブルク・モーツァルテウム芸術大学を最高点を得て卒業。2019年エリザベート王妃国際コンクール入賞、アンドレア・ポスタッキーニ国際コンクール第1位、中国光亜成都国際ヴァイオリンコンクール第1位、オレグクリサ国際コンクール特別賞等。新日本フィルハーモニー、名古屋室内管弦楽団、ベルギー国立管弦楽団、ワロニー王立室内管弦楽団、モーツァルテウム大学交響楽団、リヴィヴ交響楽団等と共演。イエローバーン音楽祭、パレルモ・クラシカ音楽祭、聖ゲレート国際音楽祭等に出演。 これまでに進藤眞弓、玉井菜採、澤和樹、進藤義武、H・ツァック、P・アモイヤル各氏に師事。現在はスイス・バーゼル音楽院ソリスト特別修士課程にてライナー・シュミット氏に師事。2021、2022年度ヤマハ音楽支援制度奨学生。

Q.4歳でヴァイオリンをはじめたきっかけは?

家にクラシックのCDがたくさんあり、車の中でもよく聞いたりする、そんな環境でした。姉がピアノを習っていて、レッスンによく付いて行っていて、自分も弾きたくてうずうずしていました。そんななか、先生から「妹さんもなにか楽器をはじめたらどうですか」と勧めていただいた。家にピアノは1台しかなく他の楽器をとなり、ヴァイオリンになりました。

最初は練習が大嫌いで、レッスンでも先生から逃げたり、出来の悪い生徒でした。

小さい頃は本を読むのが好きで、歴史の本などを読んでいました。考古学者になって遺跡を発掘したりしてみたいと思っていました。でも、いろんなところが発掘されつくしていると思って、他になにか興味があるかなとなったときに「ヴァイオリンかな」と思いました。真剣にはやっていなかったけど好きで、漠然と音楽家になりたいなと、小学校ぐらいの時には思っていました。

Q.音楽家になろうと決心したきっかけは?

本気で音楽家になろうと思ったのは、中学3年生の頃でした。音楽高校を受験するために学校説明会に行って、その時初めて音楽家を目指している同世代の人たちがいる環境に身を置いた時に、自分との本気度の違いに圧倒されました。そこから本気で練習や音楽の勉強をするようになり、音楽家を目指すということが現実的になっていきました。

当時の音楽漬けの毎日は楽しい気持ちもあるなかで、「上手くならないと」「点数が取れるようにならないと」ということで必死でした。

Q.海外での音楽活動について

現在はスイスのバーゼルという場所にいますが、もうすぐドイツのライブツィヒに引っ越そうかなと思っています。

海外での活動は7,8年になります。最初はオーストリアだったのですが、ドイツ語に慣れるのにすごく時間がかかりました。色々な国の人たちがいる環境でカルチャーショックを受けることも多かったのですが、なにより楽しかったですね。音楽に対する考え方も人それぞれで、自分の価値観以外のものであっても受け入れられる柔軟な考えができるようになったのは、そんな環境だったからだと思います。海外に行くというのは、自分にとってとてもいい決断になったと思います。

Q.ヴァイオリンの魅力を教えてください。

ヴァイオリンのために書かれた作品はすごく多くて、どんな曲でも弾くことが可能で、例えばオペラのアリアなど、歌のための作品であっても、歌いまわしを楽器で模倣することもできたり、他の楽器とアンサンブルで溶け込むこともできたりするんです。

なにより音色が好きです。歌うように表現ができると思っていて、私はあまり歌が得意ではないので、声では伝えられないけれど楽器なら伝えられるというのがあります。

また、声が人によって違うのと同じように、楽器ごとに特徴が全然違っていて出来ることも違ったりします。例えば、ホールで遠くまで届く楽器だったり、サロンコンサートに向いている楽器だったり。人によっては環境や場面で楽器を使い分ける演奏家もいますが、私はひとつの楽器を長く使うことが多いので、弓や弾き方で音色を変えることが多いです。

長く使うと楽器も演奏者に馴染んできます。逆に演奏者自身も楽器に馴染ませようとします。音楽家として楽器から学ぶことはとても多いです。その楽器が出来ること、持っている引き出しで、自分が持っていないものがあれば、楽器から教えてもらうことが多いので、楽器が持っている引き出しを探っていく過程が大事だと思っています。

初めて弾くヴァイオリンはぜんぜん音が鳴らないんですが、1,2年と時間を重ねていくとその楽器本来の音が出てくるようになるということがあります。私が使っている楽器も9年ぐらい使っていますが、初めの頃と全然音が違います。様々な微調整を重ねていき、自分の出したい音へと少しずつ近づけていくなかで、私自身の技術も向上しようとしますし、理想の音に向けて変化を続けています。楽器を育てることが、演奏家としての自分を育てることに繋がっていると感じます。

Q.JNOに参加されるようになったきっかけは?

反田さんは一方的に知っているような関係だったのですが、突然Facebookのメッセンジャーでメッセージをいただき、その後反田さんのコンサートに出演させてもらったのが参加のきっかけです。

Q.奈良の印象は?

奈良は行くだけでワクワクする場所です。これまで行く機会にあまり恵まれなかったんですが、子どものころに石舞台古墳に行ったことがあります。歴史が好きだったのでとれても嬉しく、また行きたいなと思っています。

街を歩くだけで古くからの建物がきれいに残っていたり、歴史を大切にする心を感じます。これからたくさん行く機会があると思うので、色々なところを巡ってみたいと楽しみにしています。

Q.今回のリサイタルの聴きどころは?

長い間、構想を重ね、温めてきた曲が「シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための幻想曲ハ長調D.934」です。シューベルトは8月の東京公演でもかわいらしいソナチネを弾いたんですけれど、今回はシューベルトとしては難曲として知られる幻想曲に初めて挑戦しようと思っています。

2,3年前ぐらいからずっと弾きたいと思っていたのですが、尻込みをしてしまうぐらい難しく、曲への深い理解が必要で、準備にすごく時間がかかる曲です。幻想的な世界へ連れて行ってくれるような雰囲気ではじまり、そこからどんどん展開していきます。デリケートな表現がありながら、パワフルさも感じられる名作です。ぜひお聴きいただきたいと思います。