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Japan National Orchestra反田恭平プロデュース JNO Presents リサイタルシリーズ
奈良市の魅力発信パートナーJNOの代表、ピアニストの反田恭平さんがプロデュースするJNOのソリストたちのリサイタルシリーズが今夏から始まります。
個性豊かでユニークな音楽性を兼ね備えた出演者が、奈良市内で多彩なプログラムを展開します。
コンサート情報
開演日時(開場は45分前) | 主な出演者 |
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7月25日(月曜日) 午後7時 | 有田 朋央さん(ヴィオラ) |
7月28日(木曜日) 午後7時 | 水野 優也さん(チェロ) |
8月6日(土曜日) 午後2時 | 大槻 健さん(コントラバス) |
8月18日(木曜日) 午後7時 | 森田 啓佑さん(チェロ) |
8月20日(土曜日) 午後2時 | 大江 馨さん(ヴァイオリン) |
8月21日(日曜日) 午後2時 | 島方 瞭さん(ヴィオラ) |
出演者及びプログラムの詳細はジャパン・ナショナル・オーケストラのホームページ(https://www.jno.co.jp/<外部リンク>)をご確認ください。
場所:なら100年会館 中ホール(三条宮前町)
チケット:全席指定 税込4,000円。全席指定(U30)税込2,000円。
チケット購入:イープラス https://eplus.jp/jno/<外部リンク> なら100年会館(電話0742-34-0111) 販売中
問い合わせ:ジャパン・ナショナル・オーケストラ info@jno.co.jp
インタビュー JNOコントラバス奏者 大槻健さん
奈良市出身で、一条高等学校の卒業生でもある大槻健さんに、奈良での思い出や今回のリサイタルの聴きどころ等を伺いました。
プロフィール
©Ayane Shindo
奈良市出身。
「第二回Japan International Contrabass Festival Solo Competition」1位。
これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、札幌交響楽団の客演首席奏者を務める。
現在、読売日本交響楽団首席コントラバス奏者。
Q. 奈良市に住んでいた頃や一条高等学校の思い出はありますか。
幼稚園まで奈良に住み、そこから5年間イギリスへ、9歳の時に再び日本に帰ってきてからは、奈良で過ごしていました。
なので、僕が覚えている幼少期の記憶は奈良が多いです。
学生時代は、奈良にあるお寺や神社、たくさんある古墳の良さを分かっていませんでした。
高校の近くのウワナベ古墳も体育の授業で外周を走る等、生活の中に溶け込んでいたので、特別なものだとは思っていなかったです。
ただ、今帰ってきてみると、大人向けの少し渋いまちだと感じ、改めてまちの良さを感じています。
一条高等学校での思い出はやっぱり部活動ですね。
生活の中心が部活動で、副部長も担当していました。
練習では割と批評家気質だったと思います。
吹奏楽部のコントラバスパートはオーケストラに比べると休符が多かったので、自分の譜読みが終わった後は暇になり…。
他のパート練習にお邪魔して、ここは違う、もっとこうしてほしい等と文句を言って回っていました。
今思うと自分も弾けていなかったのですが、当時は理想がいろいろあったので。
そんな口出しをしつつも、友達とは比較的仲良く切磋琢磨できたと思っています。
今でも付き合いのあるこの時の友達は、「音楽」というフィルターを通さずに僕を見てくれていると感じます。
奈良に帰ると、よく会う友達もいて、やはりここが故郷なんだなと嬉しく感じます。
ちなみに、奈良の好きな場所はありますか?
若草山の入り口ですね。
特にドライブウェイの入口から少し行くと、まちの景色が開けてきれいなんです。
中・高校生時代はあまり行けなかったんですが、大学生の頃に奈良に戻ってはよく遊びに行って、奈良のまちを眺めていました。
Q. コントラバスに出会ったきっかけは?
出会いは中学校の吹奏楽部です。
当時の顧問の先生から「君はチェロを元々やっているから、コントラバスをやってみたら」と言われ、弾いてみたらそれなりに良い音が出たのがきっかけです。
(本当はクラリネットを志望していたんですけどね…笑)
最初はコントラバスの良さが全然分からなくて。
というのも、トランペットやチューバ、サキソフォン等、吹奏楽では他の楽器の音がすごく大きく、コントラバスは音がほとんど聞こえないんですよ。
全然面白くないし、楽しくないなと思いながらも続けていたのですが、ちゃんと取り組もうと思ったのが高校に入ってから。
一条高等学校では普段オーケストラで弾いているプロの先生に出会う機会がありました。
先生に、改めて楽器の魅力について教えていただき、「なんて良い楽器なんだろう!」と感銘を受けました。
その時からプロの道に進もうと決心しました。
Q. そのコントラバスの魅力とは…?
ようやく最近「これがコントラバスの一番の魅力だ」と思い始めたことがあります。
それは「オーケストラ全体の音色を変えられる力がある」こと。
大編成のオーケストラでは50~100人いるんですが、最低音を担当する楽器としてただ支えるだけでなく、底から変えていける力があるんですよ。
例えば、僕たちがとても暖かく柔らかい風のように弾くと、すぐさま他の弦楽器も音色が混ざっていくんですよね。
低音の方向性が決まると、みんなそこに乗ってくれるというか。
一方、ショスタコーヴィッチ(ロシアの作曲家)等の楽曲では、冷たくて固い音を弾くこともあります。
そうすると、管楽器の音もかなり鋭い音で吹いてくれますし、打楽器も強烈でつんざくような音に変わる等、音に対する反応が見られます。
特にオーケストラの中で弾いていると、曲の持っているイメージや色、味等を僕たちが操作していると感じることが多く、改めて素晴らしい楽器だなと思うようになりました。
Q. 今回のリサイタルの聴きどころは?
プログラムのメイン曲、シューベルトの八重奏(オクテット)です。
去年はソロリサイタルでしたが、今年はメンバーを集めて、八重奏を主軸にした室内楽を展開します。
自分が旋律を弾くことも楽しかったのですが、僕が普段考えていること、表現したいことは、やはり室内楽やオーケストラで最低音のパートの中にあると感じています。
この曲は大編成で弾く交響曲に近い形式で書かれてあります。
でも、8人という少ない人数でしか表現できない機動力が随所に垣間見られるんです。
オーケストラは、どちらかと言うと「バス」を運転しているように感じます。
ここで曲がりたいと思っても時間がかかります。
オーケストラで色を変えるにも、全員の意思を統一しないといけない集団行動の要素が大きいのです。
団体が大きくなればなるほど、変化や機動力を出すのは難しいのです。
しかし、八重奏はそのバランスがとても良いです。
一人の奏者が出した変化に対して、すぐさま他のメンバーが追随できるのも、その魅力だと思います。
ましてやJNOのメンバーは、個々人がとても素晴らしいメンバー。
アンサンブル中でも各自のやりたい表現がたくさん出てくるので、音に対して即座に反応し、曲の色を変えることができるのは一つのおもしろみだと思っています。
Q. JNOの本拠地、奈良市でやってみたいことは?
「子ども向けだけど、本気のクラシックコンサート」を開いてみたいです。
ちょうど僕の周りは子育て世代。
友達にも子どもが生まれ、話していると子ども向けのコンサートのリクエストが多いんです。
僕も幼少期を振り返ると、あんまり大きな演奏会が少なく、有名な方も来るのが限られていたなと感じます。
分かりやすくて楽しい曲から理解するのが難しい前衛的な現代音楽までを幅広く取り扱いつつも、子ども連れでおしゃべりや大きな音を立てるのも構わない、子ども向けのコンサートをやってみたいなと思います。
子ども向けの有名なクラシック曲やアニメの曲等を弾くことも多くなると思うのですが、僕たちが普段戦っている、本気で取り組んで仕上げてきたものを、聞いてみてほしいのです。
子どもたちはとても正直なので、面白くないものは取り繕わずに面白くない反応が返ってきます。
僕たちにとってそれは一番恐ろしいこと。
でも、とても勉強になるので、本気で子どもたちと対峙、勝負してみたいと思っています。
Q. 奈良市民のみなさん、奈良市の子どもたちへのメッセージ
実ははじめ、新しいことをする僕たちが、ふらっと奈良に来て受け入れられるのかを心配していました。
古く長く伝統のある土地・風土ですし、最初奈良に本拠地を構えると聞いた時には、一奈良市民としてやっていけるのだろうか…と正直心配していました。
ただ、ここで活動してみて、とても多くのみなさんが演奏会に足を運んでくださり、さまざまな支援もいただき本当に感謝しています。
今後は、自分やメンバーの皆が東京、海外で勉強し、世界で認められてきたものを、奈良の人々にお届けしたいです。
奈良で大きなコンサートを数多くするよりも、いつでも気軽に本物に触れることができる場所として、文化のまち「奈良」を作っていきたいと思っています。
今後も引き続き暖かい応援をいただければ幸いです。
今、世の中では「音楽」=「イヤホンやヘッドホンを通して聴くもの」になっているのではないかと感じています。
外を歩く時、家でくつろぐ時も器械を通して音楽を聴くことが多いですよね。
日々の忙しさもあり、直に演奏会を聴きに行くことがとても少なくなっていると思います。
でも、ここで改めて「ライブで音楽を聴くことのおもしろさ」にも気づいてもらいたいのです。
ライブでは単に音楽を聴くだけではありません。
実は、演奏者もお客さんの反応を見ながら演奏を変えています。
「あ、飽きてきたな」という瞬間も分かりますし、反応を見ながら表現やテンポを変えているのです。
そのため、ライブでは「お客さんとともに演奏会を作っている」という感覚を強く感じます。それが噛み合う演奏会は名演になるとも思っています。
奈良市の子どもたちには演奏会に来てもらって、一緒に良いものを作ったという思いをぜひ体験してほしいです。
今後の人生を大きく変えてしまうことはそうそうないかもしれませんが、演奏会の帰り道がいつもより開けて見える、その日のご飯がおいしく感じる等、日常の些細なところに幸せを感じ、豊かな感情が芽生えることにもつながると思っています。