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木造地蔵菩薩半跏像
宝珠と錫杖を持ち、左足を下ろして坐る半跏形式の地蔵菩薩像です。当市内に伝わる同形式の地蔵菩薩像の中で、本像は帯解寺像(鎌倉時代、重要文化財)と並ぶ大きさをもちます。
本像はホオノキの一材を用いた木彫であり、頭体の主要部は大略前後に割り矧ぐ構造で、これに両脚部を寄せ、像内を大きく内刳りしています。
頭部がやや大きいものの、体部の横幅や膝張りが広く、安定感があります。目鼻や口唇の形は古様を示すものの、総じて浅い彫り口で、頬が丸く、胸・腹部の肉づけはやわらかな膨らみをつくり、体奥も程よい厚みで、皺数の少ない衣も薄い質感を表現しており、平安時代後期の穏やかな表現の特色がよく表れています。また、大きな耳や長く太い頸、右足裏を真上に向ける坐法など、一部誇張された表現は当代の地方彫刻特有の素朴で個性的な造形感覚を伝える点にも特徴があります。
平安時代後期には半跏形式の地蔵菩薩像が広く制作されたことが知られています。本像はその一例であり、市内東方の山間部に伝わる比較的大型の平安彫刻としても貴重なものです。
件名 | 木造地蔵菩薩半跏像 |
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かな | もくぞうじぞうぼさつはんかぞう |
数量 | 1躯 |
指定(分類) | 奈良市指定文化財(彫刻) |
指定日 | 令和5年3月24日 |
所在地・所有者 | 奈良市阪原町1005 南明寺 |
小学校区 | 興東 |
形状等 | 像高197.0cm 坐高142.0cm |
備考 | 平安時代 |
※現在、南明寺の一般公開は休止されています。