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男性の育児休業の好事例企業~株式会社タカギ

更新日:2024年4月25日更新 印刷ページ表示

株式会社タカギ

株式会社タカギは、奈良県橿原市にあるインナーウェアの企画、開発、生産、販売を行う創業昭和5年の歴史ある会社です。近年多くの会社が人材不足に悩む中、優秀な若手社員を多数雇用し、育成・定着させ、業績アップに成功しています。特に現社長が就任されてからは、女性の管理職の登用をはじめ、テレワークやフレックスタイムの導入、育児目的休暇の導入など、社員の働きやすい環境づくりに力を入れています。

今回は、ご自身も3人のお子様の育児に奮闘している副社長の高木鎮廣さんと、会社ではじめて「育児目的休暇」を取得した営業チームマネージャーの川嵜善輝さんにお話を伺いました。

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育児目的休暇とは

Q.御社の育児目的休暇の内容を教えてください。

A.(高木)時効で消失する有給を、翌年に育児介護の目的で最大10日間持ち越せる制度です。子どもが病気になったときに病院に連れて行くなど、育児休暇と同様に利用できます。また、お孫さんの出生時に病院に付き添ったり、第2子の誕生時に第1子の面倒をみたり、不妊治療のための休暇など、幅広く利用できる制度となっています。公的な育児休業制度もありますが、収入面では目減りしますし、ハローワークへの申請など、面倒な手続きもありますので、会社独自で使い勝手の良さを追求した制度です。

Q.確かに、ハローワークに申請する育児休業給付金制度がありますが、金額は目減りするので、「それよりも有給で」というニーズがありますね。また、お孫さんのためにも使えるとのことですが、身近なところで制度化されている話を聞いたのは初めてです。

A.(高木)うちはある意味、レアなだけです(笑)。

子どもの入院をきっかけに取得

Q.川嵜さんはお子様の入院をきっかけにこの制度を利用されたとのことですが、会社チーム内での受け止めや、仕事のやりくりはどうされましたか?

A.(川嵜) 業務内容は営業で、普段から完全出社が必要な仕事ではないため、問題はありませんでした。部署によって難しいところもあるかもしれませんが、副社長自身も子育てされているので、制度は使いやすかったです。

Q.子育てにはどのように関わっていましたか?

A.(川嵜)家事の分担は特にせず、できる方がやるという感じでした。送り迎えもそうです。妻が、残業のときは、私が送迎しますし、妻が朝早く出社する必要があるときは私が行く。逆に私に出張があるときは妻がしてくれる。家事や料理もできる方がやる、という感じですね。

Q.どちらでも、できる方がやればいい、というのは、最近の若い人たちの傾向ですね。それに男性の側も育児に関わってみると、同時並行で処理しないといけない。マルチタスクのやり方を覚えて、会社に帰ってきてからの仕事の処理方法が変わり、はかどるようになる、という話も聞きます。

A.(高木)私自身がワンオペ(育児)しているときにも、自分はどうしてこんなに不器用なのだろう、と思うことが多くありました。女性がマルチタスクで仕事をするスキル、すごいなと思います。

会社変革のプロセス

Q.仕事と育児や介護が両立できる職場でないと、人材が集まらず、会社の存続自体が難しくなる時代です。その意味で、御社はまさにフロントランナーで走ってらっしゃる印象を受けています。今回のテーマの「育児との両立」意外にも、いろいろ取り組んでいらっしゃいますね。県の社員シャインの表彰を受けておられたり、「ビジネスと人権」の関係で、人権に関する会社のポリシーも打ち出しておられます。

A.(高木)当社がこのような取り組みを始めたのは、ここ5~6年です。現在の社長である妻が入社したのは2014年、私が入社したのは2015年。当時は、3代目社長(妻の父)でしたが、正直、旧態依然とした体制でした。社員は女性が8割の会社ですが、役員や管理職は全員男性、という体制で、平均年齢も、55歳と高めでした。

会社の状況も良くなかったので、若い人の採用もなかなかできない状況でした。でも、世代交代していかないと、10年後20年後の将来像が描けない。このまま、終わってしまうのではないか、という危機感がありました。

事業の立て直しのために、新しい力を入れていかないと、ということで、私たち夫婦が入社した頃から、若い人の採用に力を入れました。そのためには、社内の環境を整えないといけない。試行錯誤して、いろいろな制度を導入しました。

若い人に選ばれる会社に

Q.社長自身も女性ですし、女性の多い職場ですね。

A.(高木)まずは中途採用という形で、30代を中心に採用しました。優秀な経歴を持った女性たちが多く面接に来てくれました。聞いてみると、応募理由は「働きやすそうな会社だと思ったから」と言うんですね。フレックスやテレワーク、育児目的休暇など新たに導入した制度や、働きやすい時間設定ができることなどをインターネット上の求人情報に載せていました。また、中小企業の強みとして、個別対応もできます。

そうやって採用した優秀な女性がたくさんいますので、さらに活躍の場を広げてもらうため、様々な依頼をしました。私たち役員がサポートするから、という前提で、マネージャーに昇進してもらうと、その人たちが良いチームづくりをしてくれました。今も継続中ですが、非常に貢献してくれています。そんな機運を醸成していく中で、若い人たちがさらに増え、育っていった、という形です。

Q.「仕事と育児の両立ができる会社」ということで、若い人に選ばれるようになった、ということですね。男性が育児にかかわる、というところに関しては、いかがですか?

A.(高木)私もパネリストとして参加させて頂いた、奈良県のわくわくworkフェスティバルの基調講演で発表されたデータによると、女性が子供を出産して最初の2週間に男性パートナーが育児に加わるか否かで、子育てが終わった女性の男性パートナーへの愛情に大きな差が出る、ということらしいです。そのときおっしゃっていたのは、「今、夫婦仲が良くない人はこれを反省してください」と。なるほど、と思いました。

それと、男性が仕事に夢中だと、女性が1人でいろいろ抱えてしまい、最悪の場合、産後鬱による自殺もあるようです。それを防ぐには、男性の側がしっかりとサポートするしかない。これは命に関わる問題ですから、男性ももっと育児に関わらないといけない、と考えています。川嵜さんに続いて、若い男性に制度を使ってほしい、と思っています。

Q.制度の導入と「女性の活躍」や「人材育成」をセットで取り組まれた、という流れですね?

A.(高木)女性に活躍してもらうためには、会社の環境を整えないと、始まらない。彼女たちの活躍=(イコール)タカギの成長に繋がっていきます。

ただ、制度は導入しただけではなかなか使ってもらえないので、そのあたりが課題です。1人1人に丁寧に対応する中で、まずは制度を1度使ってもらう。使ってみて、何がいいのか悪いのか、使いにくかったのか使いやすかったのか、というところをヒアリングして、徐々にカスタマイズしていきます。今も完成形ではないのですけれど、日々、問題があれば調整を重ねる。毎年、何かしらバージョンアップさせる、という意識で進めています。

県内企業へのアドバイス

Q.御社の経験から、他社にアドバイスをお願いします。

A.(高木)私たちは、ある意味ありがたかった、と思うんです。というのは、うまくいっている会社であれば、今までのやり方を変えたくない。多分、他の会社と違ったのはそこではないかな、と考えています。私たちはもう、変えないとどうしようもない、もうこのままでは倒産まっしぐら、という状態だった。だから、新しいことを次から次へと取り入れて挑戦するしかなかった。それが逆に、いち早く世の中の変化に対応していくことに繋がった。また、従業員たちが、変化にちゃんと応えてくれた、というところも大きいです。うまくいかないなら、どこかを、何かを変えないといけない。まずは、経営者の意識から見直すことが大切ではないかと思います。

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