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男性の育児休業の好事例企業~株式会社ハンナ

更新日:2024年4月25日更新 印刷ページ表示

株式会社ハンナ

(株)ハンナ(下村由加里社長、社員数152人)は、奈良市にある運送業の会社です。

今、運送業界は、どこも人手不足。しかも2024年4月からは労働時間の規制がトラック運転手にも適用される「2024年問題」で、全国的に大変な状況になっています。

しかし、このハンナさんは別格で、辞める人がほとんどいません。また「ハンナさんで働きたい」というドライバーが殺到しています。

数年前から取り組み始めた「健康経営」で素晴らしい成果をあげているハンナさんですが、最近はそれにとどまらず、仕事と育児の両立、特に「男性育休」の取得促進など、先進的な取り組みをされています。

実際に男性で育児休業を取得された経営管理部人事コンシェルジュの森岡真樹さんと、人事担当者である同総務課の米澤友海さんに、お話を伺いました。

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育児休業取得の経緯~本人・家族のメリット

Q.森岡さんが、育児休業を取られた経緯を教えてください。

A.(森岡)私には4人子供がいるのですが、4人目が生まれるとき、入院中は私が上の3人をみる必要がありました。

 会社に迷惑をかける、と思ったので、もう辞めるしかない、と部署の課長に相談に行ったのです。すると「辞めなくても、育休を取ったらいいんじゃないか」と提案していただいて。妻とも相談し、子どもが生まれてから1ヶ月あまり、育休を取得しました。

Q.そのときの思いを聞かせてください。

A.(森岡)「その方法があったか!」と思いました。そして、今後さらに子育てが大変だろうということで、ドライバーから今の部署(経営管理部)に異動させてもらいました、とても有難い、と思いました。

Q:ご家族の関係は、変化がありましたか?

A.(森岡)まず妻がとても喜んでくれました。とても機嫌が良くなりました。すると、家庭の中も明るくなる。それが一番のメリットだと思いますね。

また、子供との距離が非常に近くなりました。それまでは、寝るときは「お母さん、お母さん」ということでしたが、今は、私の方にも来てくれるようになりました。とても幸せを感じています。5人目も考えていますので、もしかしたら、もう1度育休を取らせてもらうことになるかも知れません。

会社のメリット~高まるロイヤリティ

Q.今、運送業界は、ドライバーの人手不足が深刻になっているので、他の会社では、男性がひと月以上も育休で休む、というと、「えーっ」となるのではないかと思うのですが、森岡さんの職場はどのような感じでしたか?

A.(森岡)私の職場の同僚は、「今辞めてしまったらせっかく仕事を覚えたのにもったいないから、育休取らしてもらって、また戻ってきたらいいやん」と。だから比較的、取得し易かったです。優しい仲間にめぐまれています。

それに、会社への忠誠心というか、ロイヤリティ、そういうものが高まっていますね。会社側から助けていただいたので、それに報いたいじゃないですか。会社にしっかりと尽くそうという気持ちになります。他の従業員も、皆そうだと思います。

Q.会社としては、それまでに「男性育休」の事例はあったのですか?

A.(米澤)実は森岡の前にも、先例はありました。その時は、短期かつ分割、という形でしたが。会社としては、本人の意向などをしっかりとヒアリングし社長面談させてもらったうえで、実際の育休に入ってもらうという形でした。その例があったので、森岡の時も、同じように進めました。

Q.おそらく世間一般には、男性が育児というのは、まだ、すごくハードルが高いと思いますが、どのように乗り越えられたのですか?

A.(米澤)当社の特徴は、新しいチャレンジをすることに、あまり違和感のない環境があり、健康経営や女性活躍に、会社全体として取り組んでいます。社員もそのことをよく知ってくれているので、みんなで協力する体制があります。ですので、実際の導入に関してはそこまでハードルは高くなかったと、私自身は思っています。このような雰囲気の会社なので、人財確保の面でも、もちろん人手不足ではありますが、応募が止まるということはなく、毎月10件以上は応募を頂いております。

実施のポイント~直属上司と社員間のコミュニケーションが重要

Q.本人には、部署の課長さんからお声掛けされたわけですが、それは課長ご自身の男性の育児参加に対する認識が高くないとできない、と思います。御社でそれができたのはなぜでしょう?

A.(米澤)管理者研修を月1回行っており、情報共有のための勉強会や研修会を定期的に開催しているので、自然に「取ってみたらどう」という提案ができるようになっていました。

Q.他に、工夫されていることはありますか?

A.(米澤)従業員同士のコミュニケーションが取れているので、「こういう話を聞いたんやけど、取ったらいいやん」とか、各営業所の安全衛生委員会のメンバーから伝えてもらう、とか。あとは、育児休業取得申請書のフォーマットを作っているので、意向確認から会社への情報の集約、部署での調整といったところも、実務的にスムーズな流れができています。

今後の展望~「人事コンシェルジュ」の創設

Q.森岡さんの場合は、育休をきっかけにドライバーから経営管理部に異動になったわけですね。

A.(米澤):森岡のケースは、辞めることも考えていた、というので、管理側としても気づくことが大きかったです。制度の周知や体制のさらなる整備は、これをきっかけにすごく進んだと思います。

森岡が最初に「やめる」ということを考えていたのは、ドライバーとして厳しいという思いが前提だった。だから復帰後は、経営管理部に異動してもらおう、ということになりました。森岡の場合はパソコンを使った業務や電話対応も経験がありましたので、事務職も問題なくできました。

今は内勤として、『人事コンシェルジュ』という形で働いてくれています。新しく入社された方のサポートや、育児休業を取得したいという方がいたら、「こういう制度がありますよ」、という相談役として対応してもらうなど。自分の経験を生かしながら、社員の採用の入口から出口までをサポートする業務をしていただいています。

A.(森岡)私もドライバーのときに、「誰に聞いたらいいのか?」と困った経験があるので、そういった困り事に対しては、「とりあえず私に言ってくれたらちゃんと対応します」、という思いです。

A.(米澤)今までは、「育児休業や産休」は女性のイメージが強かったのですが、男性も取得することで、男女平等という意味合いも込めて、お互いの理解力が高まった、というところがあります。以前から健康経営等の推進で、共通認識はありましたが、やはり実際に男性が育児休業を取得することによって、協力体制や、理解度は、さらに高まってきたと感じています。

Q.今後の課題としては、どんなことを考えておられますか?

A.(米澤)森岡のケースは、成功事例であり、すべてのケースに対応できるかというと難しい場合もあるとおもいます。「ドライバーしかできません」というような人もいますし、なかなかカバーしにくい業務もある。それに、これからは育児だけではなく、介護も大きな問題になってくると思います。経営管理部ではそういった部分にもフォーカスして考えていくべきだ、と考えています。

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