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【イベントレポ】本で探る自分の好奇心「本棚ワンダリング」部活動(in ほんの入り口)
まちなか各所でワクワク部活が動き出す「ならまちワンダリング」
―活動を通じて奈良のまちや人を知る
奈良のまちなかでアーティストと共につくる、あたらしいかたちの学びの場「ならまちワンダリング<外部リンク>」(奈良市アートプロジェクト古都祝奈良)のキックオフイベントが3/11からまちなか各所にて開催されました。
様々なプログラムやワークショップを行い、奈良のまちや人と出会いながらそれぞれのテーマを探究していきます。
■「ワンダリング」とは
脳科学の用語でもある「ワンダリング」には、「さまよう」「迷う」などの意味があります。
「ならまちワンダリング」では、奈良市内の空き地や公園、庭先などを、みんなでワンダリングしながら、新しい表現の萌芽や、市民の学び合いの場を育んでいきます。
今回は、町の本屋さんで本棚を眺めながら、自由に好奇心を広げる「本棚ワンダリング」(3/12)の部活動に密着しました!
「奈良移住を考えているけど、まちのことをよく知らない」という方はぜひ、奈良のまちや人と関わりを持つきっかけとして、「ならまちワンダリング」のようなイベントに参加してみはいかがでしょうか?
3/12 Tuesday
本棚ワンダリング ーほんの入り口ー
書店「ほんの入り口」の外観
みなさんは普段、好奇心は動いていますか…?
生きている人は皆、心臓が動いているように、好奇心が止まったまま生きている人など、いない。…本当に、そうでしょうか?
書店「ほんの入り口」の店主、服部さんはそう言います。
今日の本棚ワンダリングでは「自分の好奇心がどのように発動しているか」に着目し、本棚を眺めながら心の動きを感じる「好奇心チェック」などのユニークなワークを通し、それらを言葉にし、他の人と共有しながら、自分の好奇心を広げていきます。その後、近所のベニヤ書店へと移動し、好奇心がざわついた一冊を選び、カフェモカロンにて購入した本の発表会…、と今日の流れを聞いているだけでも好奇心がうずいてきます…!
「ほんの入り口」の店内
「ほんの入り口」は2023年5月船橋通り商店街にオープンし、店主の服部さんが「いろいろな世界の入り口になるような本」を取りそろえ、本棚には様々なジャンルの本が約1500冊並んでいます。
早くに到着された「ならまちワンダリング」参加者も、さっそく本棚を眺め、好奇心のウォーミングアップ。
店内には本だけではなく、可愛らしい雑貨や、利用者の「こんな入り口がほしい!」をまとめたメモコーナーなども。メモには「おやすみの入り口」や「だじゃれの入り口」など、気になる“入り口”が並んでいます。
時間を忘れ店内をぐるぐると徘徊し、その度に、さっきは目に留まらなかった気になる本が次々と飛び込んできます。
また自分のお気に入りの本が並んでいると、嬉しかったりと、本棚を見つめているだけで気持ちが高まっていきますね…!
14時00分 「本棚ワンダリング」スタート!
健康診断ならぬ「好奇心チェック」自分の好奇心のコンディションを確認!
いよいよ「本棚ワンダリング」がスタート。
お店の常連さんや、初めてお店に来られた方まで様々な世代の7名が参加され、中には「今日は仕事を休んで来ちゃいました」という方も!
まずは自己紹介で、それぞれの本好きエピソードを交えながらアイスブレイク。「本が好きすぎて本予算を決めた」という方や「家は積読だらけで、本に埋もれた生活を…」など、他の本好きの参加者たちからも「わかる」という深い頷きが聞こえてきます。
他にも「好奇心を刺激し自分をアップデートしに来ました!」という方や「自分で選ぶとこれまでの趣味趣向に影響を受けてしまうので、他の人の趣向に影響を受けたいです」など、普段は一人で向き合うことの多い、書店巡り、本選びを、「本棚ワンダリング」では参加者たちと、共有し合えるのも魅力です。
場も温まってきたところで、参加者同士その日の「好奇心のコンディション」を確認するため、二人一組になり「今、一番楽しみにしていること」「心配していること」を話し合います。
このワークについて、服部さん(店主)は、
「本屋を訪ねる準備運動としては、必ずしも必要なことではありません。ですが、今日は特別に、言葉にして隣の人に聞いてもらいましょう。そうすることで、この後の書店に行き本棚を眺めたとき、自分の心がザワつくものに出会えるかもしれません。」
と、言います。本棚に向かう前に、今の自分の気持ちを他の人に話すことが、好奇心の発露となることがあるとのことです。「本選び」に向けた準備運動、つい話す内容にも「何か核心的なことを…!」と思ってしまいそうなところですが、
「もちろん、話し合った内容と、選んだ本が関係している必要はありません ^^」
そう言う服部さんの軽やかなお声に、肩に入った力も抜け、参加者の方々も気軽にワークを楽しんでおられました。
15時00分 いざ“ベニヤ書店”さんへ!
ベニヤ書店までの道中、雑談をしながらお互いの好奇心を広げていく参加者たち。こういった何気ない会話も、好奇心の種となり、“一冊選び”に影響を与えているのかもしれません。
これから向かう「ベニヤ書店」は、昭和31年創業の長い歴史をもつ町の本屋さん。
「ほんの入り口」の服部さん(店主)は、出発前に「ベニヤさんで僕が楽しんでいることを共有できる…!」と、顔を輝かせて語っていました。
その魅力のひとつは、「他の本屋では見つけられなかった古い良本がある!」のだそう。
古本屋に行けば手に入るかもしれないけれど、新品本でばめったにお目にかかれないないような本、特に服部さんは「ベニヤさんに行ったら岩波書店の本をあさると面白い」と言います。岩波書店の本は買い切りで書店は返本ができない、だからこそ、古く興味深い本が残っていることがあるそうです。
そんなベニヤ書店さんの楽しみ方を伝授いただき、参加者たちも「心がざわつく一冊を見つけられるだろうか…」と期待まじりの不安を吐露しあいながらも、徒歩10分程度でベニヤ書店へ到着!
ベニヤ書店の外観
15時10分 素直なココロで、一冊の本をチョイス
「どんな本との出会いがあるのだろう…!」と膨らむ期待、高まる気持ちを抑えながら、そろりと書店に足を踏み入れると、高い壁一面にぎっしりと詰まった本棚がお出迎え。本が立てられない狭い棚にも、スペースをあますことなく本が平積みされ、あちらこちらに目移りしてしまいますね…!
まだ棚卸しされていない、ダンボールに入ったままの本が、本棚の前に置かれているのも、財宝が眠る宝箱が並んでいるようで、気持ちを盛り上げてくれます…!
最初は他の参加者と話ながら探していた方も、気づけば口を閉ざし真剣なまなざしで本棚を見つめ集中モードに。
参加者たちが手に取る本はもちろん、熱心に見つめている本棚も、「どんな本を見ているのだろう…?」とても気になります!
本を選ぶ参加者たち
岩波書店の棚
店内を歩いていると、服部さんが言っていた「岩波書店」の棚の前に。お話しのとおり、新旧が入り混じる背表紙の列に「これか!」と、つい足を止め、タイトルへと視線が吸い寄せられていきます…!
そして時間はあっという間に、制限時間の30分が経過し本選びタイム終了!
書店に向かうまでの道中、「一冊が見つかるだろうか…」と不安がっていた方も、1冊どころか2冊も購入されていました。
取材同行していたカメラマンまで、心がざわつく一冊を見つけたらしく、ちゃっかり購入。
15時30分 カフェモカロンさんにて、購入した本の報告会
町家をカフェに改修したカフェモカロンさんの店内は、我が家のような温かみのある内装と、レトロで非日常的な照明などで彩られ、「本棚ワンダリング」の成果発表会にふさわしい、落ち着きとトキメキが溶け合う空間。
店内にはカウンター席もあり、休日に本を片手にふらっと立ち寄る想像をしてみたり…。
カフェモカロンさんが準備してくれた「ならまちワンダリングオリジナルメニュー」でケーキセットを注文し、購入した本の発表会を開始!
どのようにしてその本を見つけたのか、なぜその本が気になったのか、それぞれの好奇心の軌跡を語ります!
今回はじめて「ほんの入り口」のイベントに参加されたという男性が選んだ本は、マーカス デュ・ソートイ『素数と音楽』(新潮文庫、2013年)。音楽が好きで、自身でもパソコンで音楽を作曲をしているのだそう。
好きなゲームミュージックに、素数の音階だけでできた曲があり、今回たまたま本棚でこのタイトルが目に入り、思わず手に取ってしまったとのこと。
「音楽」と「素数」という普段はあまり聞かない組み合わせのお話に、他の参加者たちも、へぇ!と興味深々でした。
またある参加者の女性は、最近見た映画の原作をチョイス。映画で見たとき、「きっとこのシーンの間には、映画では描き切れない何かがあったに違いない」と思い、原作の小説を選んだとのこと。「ネットで買おうと思えば買えるけど、書店に行ったときの感覚で買いたい」との思いがあり、気持ちが動いた今日、購入したのだという。
他にも「死」というテーマを扱った本を選んだ方や、今日の内には選びきれなかったため「本の目録」を買ったとい方もいらっしゃいました!
中には、選んだ本をレジに持っていくと、店員さんから「よく見つけてくれました」というお言葉をいただいた、という方も!
店員さんに「よくぞ!」と言わせる本を発掘する、という選び方も面白いかもしれない…!と、他の人の報告を聞くことで、好奇心が広がっていきます。
最後に今日の会を振り返りました。
「普段一人でいく書店に、団体で行く、という体験が楽しかった」
「いつもなら本棚に夢中になって時間を忘れてしまうが、今回時間制限があるのも楽しかった」
「違う世代の人とも話ができて、自分をアップデートできた気がする」
「自分が前に読んだ本を、他の人が選んでくれてたりするのも嬉しい」
などの感想が寄せられました。
発表後の時間も、初対面の参加者たちの「本好きトーク」は止まず、カフェモカロンさんの居心地の良い空間でコーヒーとケーキをいただきながら、「ブックカバーを外すのが癖で、本体がよく行方不明になる」などの「本あるある」トークに。予定時間がきても、みなさん名残惜しそうに、お話されていました。
今日一日、「本」について語り合い、他の人の好奇心に触れることで好奇心が刺激され、内から言葉が溢れてくる、そんな感覚なのかもしれません。
「奈良のまちや人のことをもっと知りたい!関わり合いたい!」という方はぜひ、奈良のまちや人と関わりを持つきっかけとして、「ならまちワンダリング」のようなイベントに参加してみてはいかがでしょうか?
▼「本棚ワンダリング」部活動に興味を持った方▼
ほんの入り口(部活主宰者)
■ほんの入り口
住所:奈良市船橋町1番地(近鉄奈良から徒歩10分)
営業:11時00分〜18時00分(不定休)
公式ホームページ<外部リンク>
奈良市の「船橋通り商店街」に2023年5月オープンした本屋さん。店主の服部さんが「いろいろな世界の入り口になるような本」を取りそろえ、本棚には様々なジャンルの本が約1500冊並び、本棚に並んだ背表紙を眺めているだけでも、好奇心がくすぐられます。
「本」そのものだけでなく、さまざまな世界への入り口へいざなう、イベントや展示が定期的に企画されており、これまでも「入り口のデザイン」「名文の入り口」「数学を楽しむ入り口」「漫画翻訳の入り口」など、多岐にわたるテーマで開催されています。
>>ほんの入り口 「イベント情報<外部リンク>」
■奈良市アートプロジェクト 古都祝奈良<外部リンク> とは
奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良(ことほぐなら)」は1300年前の歴史や文化が今に息づく奈良を舞台に、美術や演劇など現代の表現を通じて、ここに集う人びとが共に体験しつくり上げるプロジェクトです。2017年からスタート、今年で7年目の開催を迎えます。
関連リンク
- ならまちワンダリング(奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良」)<外部リンク>
3/11~3/17キックオフイベントを市内各所にて開催中! - 奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良」2023–2024<外部リンク>
「ならまちワンダリング」の他に、演劇企画「青少年と創る演劇」や、焚火を囲み語り合う「グリーンマウンテン・カレッジ」なども開催。 - 【Twitter】奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良」<外部リンク>
その他 地域や人と関わるイベント
●奈良ひとまち大学<外部リンク> まちで働く人みんなが先生に! (毎月開催)
奈良市をまるごとキャンパスに見立て、奈良市で暮らす人、働く人が先生となって授業を開催。奈良の魅力を身近に感じ楽しむ今「旬」の授業がたくさん。食や歴史、デザインなど、きっとあなたにぴったりの授業が見つかります!
▼過去の授業例
・ひとつのパンからはじまった物語~MIA’S BREADのこれまでとこれから~(2024年1月28日)
先生:MIA’S BREAD 店主 森田 三和 氏
・僕が奈良で靴をつくる理由~シロクロ製靴の普段づかいの靴~(2024年1月14日)
先生:シロクロ製靴 靴職人 伊藤 孝 氏
・火を操るパフォーマーの人生~困難を乗り越えて表現したいこと~(2023年12月24日)
先生:企画・制作パフォーマンスユニット Fox10Project 代表 松葉 真狐十 氏
>>今月の開講情報・過去の授業レポートはこちら<外部リンク>
●ボランティアインフォメーションセンター<外部リンク> 自分の力を何かに生かしたい、と思う方に。
「仕事とまではいかないけれど、空いた時間に何かまちの人々と一緒にチャレンジしたい。」「自分の能力を何か周りの人たちに役立てたい。」という方にはJR奈良駅近くの「はぐくみセンター」がにある「ボランティアインフォメーションセンター」がおすすめ。ボランティア活動を始めようとする人々からの相談に応じて、必要な情報の提供や助言、コーディネートを行います。
>>ボランティアインフォメーションセンター ホームページ<外部リンク>