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インタビュー(南都キャピタルパートナーズ株式会社 代表取締役社長 堺 敦行さん)

ページID:[[open_page_id]] 更新日:2024年4月23日更新 印刷ページ表示

奈良市を観光地からビジネスのフロンティアへ

かつての静かな観光都市から、奈良市は今、ビジネスの新フロンティアとしての変貌を遂げています。この変化の背景には、この地に暮らす人々の深い地元愛と教育水準の高さ、地域に根差した企業の革新的な取り組みがあります。奈良市がどのようにして観光地の枠を超え、ビジネスとイノベーションのまちとして魅力を増しているのかを、ここを拠点に投資事業を展開する南都キャピタルパートナーズ株式会社の堺敦行社長に伺いました。

堺社長

<プロフィール>

南都キャピタルパートナーズ株式会社​
代表取締役社長​ 堺 敦行(さかい あつゆき)さん

大手監査法人で法定監査に従事後、経営共創基盤(IGPI)にて事業計画、財務DD、新規事業開発に従事。南都銀行顧問を経て、2020年、南都キャピタルパートナーズ株式会社設立と同時に代表に就任。公認会計士。

 

教育水準の高さと地元愛が、奈良市のビジネスポテンシャルに

―――近年、観光都市からビジネス都市へと魅力を拡大している奈良市ですが、地域市場を知り尽くす専門家として、奈良市の市場動向についてどのような見解をお持ちですか。

堺社長堺さん:

奈良市の特徴としてまず浮かぶのは、教育水準が高いということ、また地元への強い愛着を持ってビジネスの中心で活躍されている方が多いということです。実際、仕事の場で知り合うビジネスリーダーやベンチャー企業の幹部の中には、奈良出身の方が大勢いらっしゃいます。

奈良市には大きな会社が少ないので、この地で立ち上げるなら小規模でも地域に密着したビジネスモデルが合うのではないでしょうか。そのためには、地元企業や自治体が協力し、新しい取り組みを推進することが重要です。また地域特性を生かした産業やサービスの開発にももっと力を入れるべきだと考えています。その上で、地元愛と教育の質が高い人材を活用できれば、奈良市の経済はより活性化し、独自の発展を目指せると思います。

 

はじめの一歩は、地域の課題を洗い出し分析するところから

―――御社では、「投資を通じてナラに新しい価値を」という理念を掲げて奈良を中心に投資事業を展開されていますが、その中でも特に注力されている事業について、具体的な事例を教えてください。

 

堺社長

堺さん:

現在、私たちはグループ会社の南都銀行と共同で、「やまと社会インパクトファンド」という地域課題を解決するためのベンチャーキャピタルファンドに力を入れています。このファンドの目標は、経済的なリターンだけではなく、奈良とその周辺地域(=やまと地域)のさまざまな問題や課題を明らかにし、解決策を見つけることにあります。てはじめに、地域が直面している問題を「健康資本」「文化資本」「自然資本」という3つの側面から分析し問題を洗い出した「やまと地域課題デザインマップ※」を作成しました。これをもとにそれぞれの課題に取り組む企業を奈良に招いて、投資と事業サポートを通じてともに問題を解決することを目指しています。

もちろん、地域金融機関の投資会社としていわゆる企業間のマッチングやビジネスサポートも行っていますが、特に可能性を感じるビジネスプロジェクトには、もっと深く、課題発見の初期段階から関わっていきます。実際、このインパクトファンドの一環として昨年末には、奈良市で活動する「株式会社do.sukasu(ドスカス)※」に投資しました。このようにして、今後も地域の問題解決に貢献していきたいと考えています。

 

※「やまと地域課題デザインマップ」は、やまと地域における課題の因果関係を可視化したデザインマップ。南都銀行関連数社や専門家によるチームがワークショップ形式で整理し作成したもので、(1)医療・介護・健康などの「健康資本」、(2)農業・林業・漁業などの「自然資本」、(3)教育・工芸・文化財・観光・スポーツなどの「文化資本」の、3つの領域に分かれている。

※「株式会社do.sukas」(本社:奈良県奈良市)は、超高齢化社会において大きな課題となっている視覚認知能力(空間認知能力と物体認知能力をあわせた能力)の評価やトレーニングを開発しており、やまと社会インパクトファンドなどから合計約4,500万円の資金を調達。

 

奈良で新たな事業を創出し、ともに成長していきたい

―――地域社会に根ざした事業を展開する地域金融機関ならではの取り組みですね。​

堺社長

 

堺さん:

そうですね。こうした取り組みや投資活動を通じて、地域の経済活性化や持続可能な社会づくりに寄与できたらと考えています。その一環として、スタートアップのビジネスプランを公募し、賞金(最優秀賞/1プラン100万円など)と「アクセラレーションプログラム」(スタートアップ企業や起業家を支援する取り組み)を提供する起業家育成プロジェクトを、南都銀行と共催で実施しています。このプロジェクトは、地域の課題を解決したいと考えているけれど具体的なビジネスプランはまだアイデア段階、という起業家も歓迎していて、最終的に4名を選定し、6か月の開催期間内にオリエンテーションや定例会を実施しながらビジネスプランのブラッシュアップと企業運営スキルの向上をサポートします。このようにして、奈良で新たな事業を創出し、ともに成長していくことを目指しています。

 

人材の確保には、就労訓練の機会を提供することも大切

―――奈良市への企業誘致を資金面でサポートしたり、外からの新しい力を地域社会とつなぐ企業の代表として、奈良市のポテンシャルについてはどう感じていらっしゃいますか。

奈良みらいデザイン堺さん:

奈良市は、大阪、京都、神戸など関西の主要都市へのアクセスが良好な上に、素晴らしい生活環境が整っています。この地域には、豊かな文化遺産と自然が織り成す穏やかな時間が流れていますから、状況変化の激しいビジネスよりも、じっくりとものづくりをしたり、落ち着いて考えを巡らせるタイプの事業に適しているのではないでしょうか。さらに、奈良市では、結婚や出産を機に仕事の現場から退き、しばらく働いていない方々が多くいらっしゃいます。そうした方々に就労訓練のような機会を提供することが、人材確保につながり、企業誘致にも有効だと思います。教育の機会を、子どもや学生向けだけでなくリスキリング(新しい技術や知識を取得すること)にまで拡大することは、教育熱心な土地柄の奈良市だからこそ取り組む価値があると考えています。

 

―――将来的な労働人材を奈良市に留めることと、就労の受け皿となる魅力的な企業を誘致すること。これは同時進行で取り組む必要があるのですね。

堺さん:

はい。奈良市は教育環境の充実により優秀な人材が育つ一方で、就職となると人材が他県に流出しがちです。隣に大阪や京都があって給与水準もやや高いため、地元での就業率が低くなるという傾向があるので、教育と就労をセットで考えて対策を打つことが大切です。しかしその反面、奈良においては、実はそれほど過当競争が激しくないともいえますから、企業としての競争力を高めれば、だれにでも進出する機会があると思います。

 

奈良市は、創業を考える人々にとって非常に魅力的な地域

―――奈良市ではまだマーケットが成熟していない、加熱化していないからこそ、将来性のある企業が入り込む余地や、大きく成長するチャンスがあるということですか。

堺さん:

私たちは事業を通じてどのように価値を生み出すかを常に考えており、先ほどお話したアクセラレーションプログラムなど堺社長も含め、さまざまな取り組みを用意しています。目指すのは、地域課題を見つけ自ら解決策を生み出せる起業家を育成すること。奈良市は、創業を考える人々にとって非常に魅力的な地域であり、企業数が少ないため個々のビジネスに手厚い支援が期待できる点が強みです。金融機関や自治体が一体となり、地域の新たなビジネスを支えることが重要ですから、役割分担を明確にし、それぞれが提供できるサポートを通じて地域内で事業の新芽を大切に育てていくこと、それが私たちの役割です。地域金融機関として持ち前の知見を活かし、積極的にリーダーシップを発揮していきたいと思います。

 

奈良市から世界へ。地域の力でグローバルに挑む

―――奈良市でのビジネス成長を考えると、“グローバル”というキーワードも大切になってきますね。

堺さん:

そうです。実際、グローバルに成功している企業を最も多く輩出しているのは、市場の小さな北ヨーロッパの国々です。これは、彼らが初めから世界を視野に入れて事業を展開しているから。特にIT技術やソフトウエア関連企業には顕著です。奈良市も同様に、地元に拠点があってここが精神的な中心ではあるけれど、実際のビジネスは世界のフィールドで展開しているという状態を作れると良いですね。また、アカデミアとの近さも重要なポイントです。近年、世界を変えるビジネスリーダーにはアカデミックな背景を持つ人々が増えていますから、学問の町である奈良市には、この時流を生かすための相対的な価値があります。この地で生まれる新しいビジネスが、グローバルな舞台で成功することを願っています。

 

―――学問があり、文化があり、歴史もある。そういう環境要素は、奈良市の計り知れぬポテンシャルといえますね。

堺さん:

地元の人々にとっては当たり前のことでも、客観的に見るととても恵まれた環境にある。そうした奈良の価値に改めて目を向けることは、非常に有意義だと思います。これからの奈良市をどういう風に形作っていくのか、いろんな方を巻き込んで話をして、行動に移していきたいですね。そういう発展的な話し合いが日常的にできるまちであれば、新しい方々が入ってきた時にすんなりとなじみやすいのではないでしょうか。

堺社長

 

<取材後記>

南都キャピタルパートナーズ株式会社の堺社長から伺った「地域社会に貢献しながら事業を展開する」という同社の取り組みは、単なるビジネスモデルを超えた深い思考の表れでした。その言葉からは、奈良市の未来に対する強い信念と情熱が感じられ、奈良市がただの観光地ではなく、ビジネスとイノベーションの地としても大きなポテンシャルを秘めていることを改めて実感しました。奈良市の未来に期待を寄せつつ、地域に根差したビジネスの発展とその成果が社会全体にどのような影響を及ぼすのか、これからも注目していきたいところです。

 

取材日:令和6年2月
取材/撮影:世界文化社

 

 

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