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企業インタビュー(株式会社誠勝 社長室長(AI事業開発担当)・上級デジタルアーキビスト 寳徳 真大 さん)

ページID:[[open_page_id]] 更新日:2024年2月1日更新 印刷ページ表示

奈良市に根ざす、デジタルアーカイブの可能性

地域経済を学び、現在はデジタルアーカイブ事業に従事している寳徳さん。彼の奈良市での仕事は、情熱と使命感によって形作られてきました。デジタルアーカイブ技術と次世代への教育を融合させ、未来に向けた文化の継承と地域経済の活性化を目指すという挑戦は、単に過去を保存するだけではなく、新しい価値を創造することに重点を置いています。その情熱の源泉と奈良市での事業に対する思い、そして文化と経済が交差するこの地で見出したデジタルアーカイブの可能性に迫ります。

株式会社誠勝 ほうとく様

<プロフィール>

株式会社誠勝
社長室長(AI事業開発担当)・上級デジタルアーキビスト 寳徳※ 真大(ほうとく まさひろ)さん
徳の字は正しくは德と表記します

上級デジタルアーキビスト(文化資源であるデジタルアーカイブを記録・保存・管理するプロフェッショナル)としても活躍する寳徳さんは、京都大学で地域経済を学び、新卒でシンクタンクに就職。再生可能エネルギー事業や人材育成業務に従事した後、博物館法改正を機にデジタルアーカイブの重要性を感じ、株式会社誠勝へ入社。地域経済の専門家からデジタルアーカイブの先駆者へとキャリアを転換し、奈良市の文化的価値の保存と活用、またそれを未来に繋ぐ次世代の人材育成に尽力している。

 

奈良の豊かな文化資源とデジタルアーカイブへの可能性に惹かれました

―――学生時代は、京都大学で地域経済を専門に学ばれていたそうですね。

株式会社誠勝 ほうとく様の写真

寳徳さん:

農学部で農業経済を専攻していました。そこでは農業経営学や農業の歴史などさまざまな分野がありましたが、私は地域経済と産業をマクロな視点で捉える研究に興味を持ち、専門的に学んでいました。

卒業後は首都圏と関西圏に拠点を置くシンクタンク企業で再生可能エネルギー関連の事業に携わり、その後自治体や企業の職員に向けた人材教育部門での経験を経て、一度地域経済学を専門としたリサーチャー業務で起業したりもしました。

そうした中で「博物館法改正」の動きを知り、デジタルアーカイブと地域経済が結びつく重要性を感じて現在の会社に転職しました。奈良の豊かな文化資源とそのデジタルアーカイブへの大きな可能性に惹かれたのです。

 

―――京都と比べて、奈良にはどのような魅力を感じますか?

寳徳さん:

もちろん京都にも愛着はありますが、ある意味、観光都市として既に大きく名が知れてしまっているという印象があります。一方で奈良は、もちろん観光都市のイメージが強いのですが、京都よりさらに歴史の深い日本文化形成の礎の地として、まだまだそれ以外の産業創出に裾野を広げられる可能性がある、そしてまだ生かされていない文化財や歴史的資料などの「文化資源」がたくさん残っていると思います。

 

さまざまなシーンで、デジタルアーカイブの価値を高められたら

―――現在の会社での業務内容について教えてください。

株式会社誠勝 ほうとく様の写真

寳徳さん:

当初は、デジタルアーカイブの基礎としてひたすらスキャン作業を担当していましたが、そこで数々の文化・産業資料に触れてまずは自分自身も実践的な知見を深め、現在は社長室長として新規事業の企画や推進に携わっています。その中でも奈良の土地柄を活かして、デジタルアーカイブの利活用を通じた司書・学芸員を目指す人への教育事業を開発し、その推進に取り組んでいます。

 

―――なぜ、デジタルアーカイブの利活用が必要だとお考えでしょうか。

寳徳さん:

デジタルアーカイブへの投資が興らず、貴重な史料が消滅するリスクが高くなるからです。デジタルアーカイブは保存量が増えていけばいくほど維持費などのコストがかかります。そのため構築したデジタルアーカイブを有効に利活用し、そこから何らかの実利を生み出して人と経済の循環に繋げていかないと、後世に継承していくことはできません。そのためには、教育現場での利活用も含め、さまざまなシーンでデジタルアーカイブの価値を高める必要があります。

 

次世代の若者のキャリア形成に、大きな選択肢を提供したい

―――教育事業に力を注いでいると伺いましたが、その背景にある思いを教えてください。

株式会社誠勝 ほうとく様の写真

寳徳さん:

2023年に奈良支店発の新規教育事業「まちづくりの誠勝」をリリースし、これまで奈良市内では、大学と連携した教育や奈良県主催のキャリア教育の場でのプログラム企画・実施などに取り組みました。奈良には司書・学芸員を目指す学生など、文化の保存・継承に情熱を持つ学生たちが多く、彼らに対するデジタルアーカイブを利活用した教育機会を確保することは、今後の奈良市にとって、新たな成長の大きな可能性を拓くことに繋がると考えています。ただ、文化施設への就職は狭き門で競争が激しいため、我々は単に知識を伝えるだけでは不十分だと考えます。そこで、専用機材を用いたデジタルアーカイブ化の作業や、既に存在するデジタルアーカイブを利活用し、課題解決のアプローチを学ぶ実践型のスタイルで実施するようにしています。デジタルが当たり前の時代においては、図書館や博物館などの文化施設でこのような実践的な仕事が求められていきますし、一般企業に就職したとしても、データアーカイブのスキルとしても生かせるはずです。

 

―――実際の講座では、どのような内容で学びの場を提供されていらっしゃいますか。

寳徳さん:

株式会社誠勝 ほうとく様の写真さまざまなパターンがありますが、例えば、奈良市に繋いでいただいた奈良大学では、学生にRESAS(内閣官房と内閣府が管理する地域経済ビッグデータシステム)に触れてもらいたいという目的で、文学部国文学科の授業の一コマを借りて1時間半ほどの集中講義を実施しています。最終的には図書館・博物館の課題解決策を学生自身が考案し、奈良市教育委員会に還元するところまで実施しました。他にも奈良県主催のインターンシップ事業に参画した際には、テキストマイニング技術(膨大な文書データから有益な情報を抽出・分析する技術)も交えて「各参加者が貴重資料のデータを使って人材教育の課題を考える」というテーマでプレゼンテーションをしてもらうところまでやりました。 まさにデジタルアーカイブをもとに参加者自身が自分の頭で考えて課題解決の方法を探るという実践型の教育プログラムになりますね。

 

奈良市には、文化の保護や継承に関心が高い人々が多いと感じます

―――奈良市でデジタルアーカイブ事業を展開することの利点は何でしょうか。

寳徳さん:

奈良市は貴重史料や文化財が豊富で、文化の保護や継承に関心が高い人々が多い土地柄です。こうした環境は、デジタルアーカイブの構築と利活用、人と文化の循環を生みだす上で非常に有益です。また、奈良市には司書・学芸員課程を持つ大学が複数あり、実際に全国から学生が集まっています。この地でデジタルアーカイブの構築と利活用について実践的に学ぶことで、全国に先駆けて司書・学芸員のキャリアを拓ける可能性を感じています。そして同時に、教育だけではなく、司書・学芸員の方が活躍できる仕事を生み出すことも重要です。奈良市の文化施設や老舗企業には貴重な文化資源がまだまだ多く眠っていまし、それらをデジタルアーカイブ化して利活用することで、司書・学芸員が活躍する産業を創出できると考えています。結果として奈良市への人材の流入・定着や、地域経済の活性化にも寄与できるのではないでしょうか。

 

地域を愛し、共創にむけて熱い思いを持った人が集う奈良市

―――奈良市で仕事をする喜びや、他の都市とは違う魅力についてお聞かせください。

寳徳さん:

奈良市は、デジタルアーカイブに関わるあらゆる可能性を秘めた都市です。まだ発掘されていない文化的・歴史的資源も多く、それらを活用して新たな価値を生み出すことができます。それに加えて、私も研究員として参画している「奈良市みらい価値共創プロジェクト研究」(2023年からスタートした新事業の共創を研究することを目的とした9か月間×3年間のプロジェクト)など、奈良市が自治体として地域経済の活性化に積極的に取り組んでいるということも、他の都市にはないアドバンテージだと思います。

このプロジェクト研究では、多様な背景を持つメンバーがそれぞれの得意分野や専門性を活かして事業を作っていく中で、協力可能なポイントを共有したり、それぞれが自立して事業を作り上げ、連携するという好循環が少しずつ生まれています。奈良市には、地域を愛し、共に何かを創造しようとする熱い思いを持った人々が多いと感じます。それが、奈良市で働くことの最大の魅力であり、理由ですね。私にとって奈良市での仕事は単なる職務以上のもので、文化的、歴史的資源を守り、未来に繋げるという使命感を持って取り組んでいます。私たちが日々行っているデジタルアーカイブ事業は、過去を保存するだけでなく、それを活かし新たな価値を創造することにも繋がると信じています。

 

新しい雇用や職業の創出に繋がるよう、今後の事業展開を

​―――つまり、デジタルアーカイブは単に古いものを保存するというよりは、それを活用して新しい何かを生み出すための手段とも言えるのですね。

株式会社誠勝 ほうとく様の写真

寳徳さん:

まさにその通りです。先ほども申し上げたように、デジタルアーカイブ化された資料から得られる知的資源を使って、地域経済の活性化や教育の向上に繋げることはもちろんのこと、最近では、構築したデジタルアーカイブを活用して周年事業やブランディングに繋げようという企業も増えています。例えば企業の広報部や周年担当などに配属されると、デジタルアーカイブの構築と利活用の技術や能力が十分活かせると思います。自治体や会社の文書管理、情報管理でも必ず役立つでしょうし、今後どんどん新しい雇用や職業の創出にも繋がっていくイメージができています。そうした点も奈良でデジタルアーカイブ事業に関わる醍醐味の一つですね。

 

―――それは非常に意義深い取り組みですね。最後に、奈良市でのデジタルアーカイブ事業において、今後の展望を教えていただけますか。

​寳徳さん:

奈良市は、文化的・歴史的な資源が非常に豊富なので、この分野での可能性は計り知れません。私たちはデジタルアーカイブを通じて、これらの資源を未来に繋げ、さらにそれを基に新しい事業やプロジェクトを生み出していくことを目指しています。また、私たちの取り組みを通じて、人々に文化財の重要性を理解していただき、それを保護し継承することの大切さを伝えることができればと思っています。奈良市という土地が持つ独特の魅力と、そこで働く人々の熱意がこの事業をさらに発展させ、多くの人々に価値を提供していくことを信じています。

 

<取材後記>

寳徳さんの言葉からは、地域経済とデジタルアーカイブがどのように連携し、新たな価値を生み出しているかが明らかになりました。奈良市の文化的・歴史的な背景を活かしたデジタルアーカイブの取り組みは、単に過去の保存に留まらず、未来への投資として、地域社会の活性化に大きく寄与していることが伝わってきます。

取材日:令和5年11月
​取材/撮影:世界文化社

 

 

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