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企業インタビュー(株式会社誠勝 代表取締役社長 山本 大視 さん)

ページID:[[open_page_id]] 更新日:2024年2月1日更新 印刷ページ表示

文化都市・奈良で、デジタルアーカイブの未来を拓く

デジタルアーカイブ事業を柱に成長を続ける株式会社誠勝(本社:東京都新宿区)は、地域の経済振興と雇用創出を目的に奈良市が2020年に創設した「サテライトオフィス等設置推進補助金」(上限500万円・補助率1/2)の、助成対象企業第1号として認定されました。翌2021年には市内に奈良支店を開設。以来、関西圏の需要にも応えながら、地域の文化を保全し、未来の世代に伝えることを目指しています。顧客から貴重な史資料や現物を預かりデジタル化するという事業の特性上、オフィスの開設地は災害リスクが低い場所であることが絶対条件。内陸に位置し気候も比較的安定している奈良市には、こうしたBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の観点からも惹かれたと語る山本大視社長に、進出の経緯と今後の展望について伺いました。

株式会社誠勝 山本社長

<プロフィール>

株式会社誠勝
代表取締役社長 山本 大視(やまもと だいし)さん

静岡県出身。学習院大学卒業後、複数の企業で新規ビジネスの立ち上げを経験し、2012年に株式会社誠勝を創業。「“文化を継承するアメーバ”を創る。」をミッションに掲げ、デジタルアーカイブの構築や利活用、その循環による司書・学芸員などの人材育成事業を手掛けている。

 

他都市に勝る奈良市の迅速で温かい対応に、心を動かされました

―――いち早く奈良市の魅力に着目しサテライトオフィスを開設されましたが、その経緯を教えてください。

山本さん:

株式会社 山本様の写真

もともとは東京本社にてウェブサイト上で集客し、作業も東京で行うという流れでやっていたのですが、ウェブサイトを通して全国各地からお問い合わせをいただくようになり、その中でも東京圏の次に多いのが関西圏からのお問い合わせやオーダーでした。それにもかかわらず関西圏での受注割合が低かったため、デジタルアーカイブ事業そのものの認知度を高め事業を発展させるためにも、ぜひ関西に拠点を作りたいと考えたのです。

 

データセキュリティの観点から、クライアントの側に事業所の確保を

―――関西圏での受注が少なかったという背景には、どういった要因がありましたか。

山本さん:

マーケティングリサーチや情報収集を重ねていくうちに、原本・現物の搬入や保管を念頭に置くと、データセキュリティの観点からどうしても近くの企業に依頼しがちであるという傾向が見えてきました。アーカイブ化したい資料や情報、商品の現物を持ち出して遠距離を運搬することに不安を覚えるクライアントが多いのです。それならば、事業を発展させるためにも安定的かつ効率よくアーカイブ作業ができるスペースを関西圏に確保したい、という思いが強くなっていきました。

 

―――関西圏の中でも、奈良市にサテライトオフィスを開設しようと決めた理由はどのようなものだったのでしょう。

山本さん:​

株式会社誠勝 山本様の写真

当初から候補地を奈良に絞っていたわけではなく、いくつかの周辺都市について、助成金や支援状況を調べて比較検討しました。その中で関西圏のクライアントが集中している大阪や京都へのアクセスが良く、なにより、最初に問い合わせた際の奈良市の迅速なレスポンスに感銘を受けたのです。コロナ禍にも関わらずすぐに折り返しがあり、「明後日、東京まで面談とお打ち合わせに伺います」というような感じでした。他の自治体では相談を持ち掛けてもしばらく寝かされたり、電話だけであっさりと済まされたり、スムーズに対応していただけないこともあったので、事業者側としては、奈良市のスピード感は実に魅力的でした。そのような親身な対応は信頼感に繋がりますし、やはり気持ちが動かされます。決断するにあたって、とても大きな要素でしたね。

 

BCPの観点と、奈良市との信頼関係が大きな決断の後押しに

―――地方に拠点を増やすというのは、経営者としてとても大きな決断と覚悟が必要になりますね。

山本さん:

最新のスキャナーの画像そうです。初期投資として中小企業でも大体数千万円規模の投資は必要になりますし、簡単には決められません。自治体から幅広く情報を提供してもらったり、細やかに相談に乗ってもらえると、このまちなら進出しても大丈夫だな、という信頼感が湧いてくるものです。加えて、奈良は博物館学芸員や図書館司書の養成課程をもつ大学が複数集積していて、文化的な仕事に興味を持つ方が多いという印象があります。そしてやはり、地理的に自然災害が少なく安定性があることも大変大きな要素でした。当社の事業で最も恐れるのは水害です。過去のデータから見ると、奈良は水害に見舞われるリスクが低い。再生がきかない古文書や契約書などの重要書類をはじめ、絵画作品や紙ベースの芸術品など文化財も扱っているという意味では、水害は本当に避けたいのです。そうしたBCPの観点からも奈良は安心感が違います。

 

―――実際に奈良市に拠点を設けてのご感想や、収益面での手応えなどはいかがですか。

​山本さん:

希望通り、業務を安定かつ効率的に進めることができていますね。収益面では、初年度(2021年度)だけで言えば前年比約150パーセントの増収でした。立ち上げ当初は初期投資を2~3年で回収できたら…と思っていたのですが、初年度で全て回収できました。コロナ禍で、デジタル化に関わる事業は全体的に伸びたのですが、走り続けるだけじゃなく、今までの財産をきちんと後世に残すためにデジタル化して保存しよう、そして振り返ろう、という発想が生まれたのかもしれません。

 

―――そうした社会情勢に加えて、拠点を奈良市に置いたからこそ新規案件を受注でき、優秀な人材もキープできた、という点も収益面の好調に大きく影響しているのでしょうか。

​​山本さん:

株式会社誠勝 山本様の写真私たちの仕事は、重要な案件を獲得しても実際に現場で仕事をしてくれる人材がいないと成り立ちません。東京本社でも人材を募集しましたが、実際には労働時間や時給の問題などがあり、近年では東京での優秀な人材の確保は本当に難しいと感じます。

オフィスを設けるにしても土地が高いので、東京で新たに事業所や作業スペースを拡大しようという考えにはなりませんね。家賃や人件費が奈良と東京では圧倒的に違いますから。事業拡大の拠点として、近い将来この奈良支店に、企画立案や事業推進ができるスペシャリストを最低でも15人~20人雇用したいと考えています。

 

デジタルアーカイブ事業が叶える、未来への貢献を信じて

―――今後の展望や計画について教えてください。

山本さん:

現在は奈良市を拠点として順調に事業を展開していますが、今後は地域との連携を強化し、関西圏でのビジネスを一層拡大していきたいと考えています。

また、地元での人材育成も考えています。奈良で採用した従業員は離職率が低いというのも、経営的には大変大きなアドバンテージとなります。企業にとって人材育成は最もお金と時間がかかることです。そうした意味でも、奈良には腰を据えて働いてくれる従業員が多くいてくれるので、人事の課題を抱えることなく、経営者は次のステップに意識を向けられるようになります。

 

―――具体的な新規事業について、なにか動き始めていることなどはありますか。

山本さん:

奈良市から発信し、デジタルアーカイブの普及と、教育分野での利活用を進めています。今後民間企業のアーカイブズ管理においても必要となるデジタルアーキビスト(歴史や文化資料をデジタル化し保存・管理する専門家)ももっと増やしたいですね。必ずしも特別な企業の貴重な資料ばかりをアーカイブするというわけではなく、人々の日々の暮らしに直結するようなデジタルアーカイブの構築も必要だと思うのです。そういったスキルを持つデジタルアーキビストを育てて、暮らしや教育など社会の中で気軽に利活用できるデジタルアーカイブを作り出すことが、当社の大切な使命だと感じています。

 

―――蓄積されたアーカイブデータを、未来の子どもたちに活用してもらいたいという思いがあると伺いました。

山本さん:

株式会社誠勝 山本様の写真せっかく蓄積したデータも、有効に活用しないと単なる遺物になってしまいます。そうではなく、歴史の積み重ねを振り返るための材料にしてほしいのです。それを奈良から発信し、市場を拡大したいと考えています。とにかく、デジタルアーカイブという言葉や事業を世の中にもっと普及させたいですね。さまざまなリスクに強く、自治体のサポートも充実していて文化的要素の多い奈良市でなら、きっと実現できると思っています。​

 

<取材後記>

観光都市としてのイメージが強い奈良市ですが、山本さんはいち早く、事業を発展させる場所としての奈良市の魅力とポテンシャルに気づき、支社の開設を実現しました。今回経緯や決断理由などを伺ってみると、BCPの観点からの安定性や、環境や風土、人材の豊富さなど納得の実例ばかり。奈良市を第二の拠点として未来につながる事業を発展させていくその取り組みに、これからも注目です。

 

取材日:令和5年11月
​取材/撮影:世界文化社

 

 

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