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Episode1「アジサイガラスボール」でお寺の参拝客急増(しみんだより9月号特集より)

更新日:2023年8月24日更新 印刷ページ表示
アジサイガラスボール2

般若寺のインタビュー記事を全編公開

飛鳥時代から奈良に根差し、コスモス寺として名を馳せる般若寺。目を引く風景の数々や、アジサイをガラスに詰めた「アジサイガラスボール」をインスタグラムで発信し、注目を浴びています。これらを手掛ける副住職の工藤さんに、インスタグラムによって変わったことや、お寺の魅力発信について、お話を聞きました。

人物写真

般若寺 副住職 工藤顕任さん

元プロボクサーという異色の経歴を持つ。般若寺のSNS運営担当

プロボクサー引退後、独学でお寺の情報発信役に

プロボクサーは学生時代なので随分昔の話ですが、般若寺で本格的にお寺の法務をするようになり、そこでまず最初にお寺に何が必要かを考えました。その時に、やはり般若寺は小さなお寺ながらも観光主体の寺院ということもあり、顔になる公式サイトを作ろうと考えました。

とは言え、今まで専門的な勉強もしていないので、人に聞いたり本で調べたり、独学でホームページの作成に取り掛かりました。その際に使用する写真なども全部自分で撮って使用しています。英字の羅列など素人の自分にはさっぱりで、とても難しかったのですが、デザインをするのは楽しかったので何とか形にできました。

ある写真をきっかけに、注目を浴びる

般若寺はコスモスが有名ですが、今回インスタグラムを通じて広く知られるきっかけになったのは、初夏の紫陽花(あじさい)でした。

もともと紫陽花は境内に地植えで、6月になると数株だけ咲いていて、これといって力も入れていませんでした。なので早めに花を剪定をしていたのですが、満開を超えた紫陽花もまだまだ綺麗で、そのまま捨てるのもかわいそうな気がしました。その時に、紫陽花の花をもう一度きれいにしてあげたいなという思いで、ガラスの器に入れてみました。

特に紫陽花の花は丸みがあって、360度どの角度から見てもきれいなんです。それなら全体を見られる球体のガラスの器に入れてみたら絶対きれいだと思ったのです。本来なら器に茎だけ入れてお花を活けますが、花をガラスの器いっぱいに水に入れて完全に浸してしまうことで、ガラスの輝きも生かしたきれいなオブジェができると考えました。それが、「アジサイガラスボール」が生まれたきっかけです。

最初は1個だけでしたが、2、3個と増やしていくととてもきれいで、それをインスタグラムに投稿したところ「綺麗!!」「宇宙の惑星みたい!」等と反響があり、瞬く間にSNS上で広まっていきました。それと同時に「アジサイガラスボール」を見に来られる参拝者も急増しました。最初は1個から始まったアジサイガラスボールでしたが、3年目になる今年は200個まで数を増やしました。

また、それまではインスタグラムのフォロワーは500くらいでしたが、アジサイガラスボールを始めた年の6月で一気に8000まで増え、驚きました。それと同時に、全国ネットのニュースにも紹介していただく等、メディアにも多く出していただきました。SNSでは全国各所で真似されているところも結構あったりと(笑)

それと同時に、アジサイガラスボールを始めるまでの6月の参拝者は、1か月で2,000人程でしたが、今は1か月で20,000人ほどにお越しいただけるようになりました。毎日水替えの作業があるので大変ではありますが、今はすっかりアジサイガラスボールのお寺になりました。

アジサイガラスボール1

発信する上で大事にしていること

大事にしている点は写真の構図です、誰もが撮りやすい構図で撮影しインスタに投稿します。今はスマホカメラで撮る人がほとんどなので、スマートフォンで撮りやすい構図をできるだけ意識しています。

他にも、自分がきれいと思うものをイメージし、まず実践することが大事だと思います。必ず反響がある発信方法は分かりませんが、アジサイガラスボールのように、イメージを具現化し、多くの人から反響があることもあります。

なので普段から色んなものを見て想像して「何でもやってみる」ということが大事なのかな、と思います。反響があればラッキーだし、ダメならダメでまた色々試してみれば良い。まずは何でもやってみることが大事です。

お寺の立場から見た「Old History, New Discovery」

「Old History」

奈良は日本の中でも最も古い歴史がある場所です。もちろん深い歴史のピックアップももちろんのことですが、アイデアひとつで新たな奈良らしい歴史を作っていける場所だと信じています。

「New Discovery」

今回の場合「アジサイガラスボール」が広まりましたが、実はこれらは身の回りにあるもので、決して手にするのが難しいものはありません。少し視点を変えれば違う表現や使い方ができて、それが新たな発見や魅力を生むような気がしています。インターネットが普及している現代だからこそ、場所にもとらわれず、どこにいても知ることや知ってもらうこともできます。お寺の場合、移動することができないので、SNSでお寺の魅力や仏教の魅力なども存分に表現できる時代だと思います。

「温故知新」という言葉があります。古きを大事にし新しきを知る。

お寺という歴史のある場所でも、新しいことをやってみるのが大事だと思っています。特に般若寺は、観光主体のお寺ですから、もちろん守ることを軸にしながら、これからの時代に沿っていろいろやっていけたらと考えています。全く関係のないことはダメですが、般若寺と花はセットみたいなところがあるので、それを守りながら視点を変えて新しいことにも取り組んでいきたいです。

「アジサイガラスボール」を始めてからは、20代くらいの若い参拝者の中に「アジサイガラスボール」をSNSで知って来られた方がいて、現地に来て初めて「お寺」と知ったという方もいらっしゃったほどです。そういったお寺との縁も何がきっかけになるか分かりません。ですので、老若男女関係なく素敵だなと思っていただける様なお寺にしていきたいです。そして、本堂の中で仏様に手を合わせて自分と向き合う時間を作って頂き、その後、境内で花などを楽しんでいただけるお寺でありたいです。