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奈良しみんだより平成27年7月号(テキスト版)2~5ページ 特集:ルーツは「ここ」にあり。~日本を代表する奈良の伝統工芸~

更新日:2019年11月7日更新 印刷ページ表示

ルーツは「ここ」にあり。

日本を代表する奈良の伝統工芸

現代まで継承されてきた日本の伝統工芸。日本が生み育ててきた手作業による繊細な技、「静」の中にある華やかさ、美術品でありながらも実用性「動」を兼ね備えた日本の伝統工芸品は「ものづくりの国」としての象徴であり、海外からも高く評価されています。そして、その中には長い歴史の中で伝統を守りながらも、その時代時代の風潮を取り入れながら進化し続けてきた奈良をルーツとする伝統工芸が数多くあるのです。2020年の東京オリンピックに向け、ますます日本への関心が高まる中、世界遺産とともにこの誇らしい「奈良の伝統工芸」の魅力にも世界からの注目が集まるでしょう。

人間国宝北村昭斎さんインタビュー

「源は奈良。ここには伝統の継承を必要とする文化があった。」

大陸の文化に独自の技を加味した伝統工芸

美しい光を放つ貝を使った工芸品である螺鈿は、中国から伝わったものと言われています。中国で残る螺鈿のほとんどがお墓から出土したもので劣化が激しいのに対し、正倉院には20点もの作品がほとんど当時のままの状態で納められています。国内でも盛んに制作されるようになり、螺鈿の技術は、時代とともによりきらびやかな日本文化を彩っていきます。特に、螺鈿と漆との組み合わせは日本独自のものとしてその存在感を確立しています。漆の色は、「漆黒」や「烏の濡れ羽色」と表現される日本独自の「黒」で、ヨーロッパで漆の黒が注目を集めた時期がありました。ピアノが木目から黒になったのもその表れと言われるほど、漆の黒はヨーロッパの人々を魅了していたように、海外でも白と黒の美しいコントラストが好まれ、高い評価を受けてきました。奈良という地は、大陸から伝わった文化が、時代と共に変遷していくその移り変わりをよく示しているところです。これが「源は奈良」と言われる所以です。この歴史の長さ、受け継いできたものの大きさが、奈良だからこその素晴らしさなのです。

現代に劣らない技術を持った奈良時代

螺鈿は、夜光貝を削り取って板状にして木や鼈甲などに装飾していきます。貝の厚みによっても切り抜く作業法が変わります。1ミリ程度の厚い貝だと加工はより難しく、今では主に糸鋸を使って切っています。古代奈良でも厚貝を使用していたことが分かっていますが、当時使われていた道具も残っておらず、どのように加工していたのか推測するのみですが、当時の奈良の人々も非常に優れた高い技術を持っていたことは間違いありません。

歴史ある奈良ならではの伝統の継承

奈良には古い形式を継続的に伝承し、それを必要とする文化があります。寺社での祭祀の伝承ですが、私自身も春日大社の式年造替や伊勢神宮の遷宮などに携わってきました。祭祀自体が受け継がれていくだけでなく、祭祀にまつわる様々な伝統や技術をも地域で受け継いでいく重要な役割が私たちにはあると思っています。

伝統の型を「守る」か、新しい型を「創る」か

奈良市には「なら工藝館」があり、後継者の育成に取り組んでいます。そこでは若手の職人が活発に活動し、伝統の型を破った斬新な作品を発表しています。伝統の型を守り続けるのが良いのか、新しい型を創る方向性を見出すべきなのかとの議論もありますが、私は、新しいことをするのは決して無駄ではなく、むしろ若い頃には大いにやってみるのが良いと思っています。これまでの長い歴史の中でも、伝統工芸は、伝統を守りながらもその時代の新しい要素を取り入れて発展してきたはずだからです。

「いいもの」に触れるということ

伝統工芸は作る人だけでは成り立ちません。多くの人は作品を手にしたり、身に付けたりする側の人たちです。そのような人が作品とどう接するかというのは人それぞれだと思いますが、関心を持って触れていく中で、「いいもの」を見極める感性を身に付けていくのがよいのではないでしょうか。そうすると、工芸品を熟知したいという気持ちがわいてくることもあるでしょうし、やってみたいと思って挑戦してみるというのもいいかもしれません。

北村昭斎(螺鈿、昭和13年生)
東京芸術大学卒。一般企業勤務を経たのち、漆芸作家として活躍し、文化財の修理・復元等にも携わる。螺鈿技法にすぐれ、平成11年重要無形文化財保持者(人間国宝)となる。文部大臣賞、日本工芸会賞等多数受賞。平成10年紫綬褒章を受章。

3人の伝統工芸作家にインタビュー

奈良筆 伝統工芸士、松谷文夫

昭和24年生。28歳の時に奈良筆作家に弟子入りし平成14年に伝統工芸士として認定される。株式会社あかしや(電話番号:0742-33-6181)

正倉院に17本の筆が納められていることからも奈良は筆の発祥の地と言え、他にはない歴史と伝統を誇ります。素材と技術が映える奈良筆素材選びから筆1本が完成するまで、すべてを手作業で作り上げる奈良筆は、職人の技術力に裏付けされた高い品質を誇る道具であると同時に、近年では装飾をあつらえるなど、その美しさから工芸品としても好まれています。奈良筆の制作工程の中でも、特に素材選びは本物を見極める職人の眼が頼り。同じ1頭のヤギから取った毛でも、その年代や部位によって100円の筆も100万円の筆も作ることができるからです。「使う」ことでわかる筆の良さ筆は「書く人」が「使う」もの。天然の原材料と手作業とにより二つと同じものができない一品ものの奈良筆。年賀状を書くとき等、身近な機会から使ってもらえればうれしいです。

奈良団扇職人、池田匡志

平成2年生。学生時代から家業を手伝う。創業当時から変わらない技術を受け継ぐ。22歳の時に6代目襲名。池田含香堂(電話番号:0742-22-3690)

奈良団扇は、数ある団扇産地の中でも、最も歴史が古いと言われており、そのルーツは1300年前に春日大社の神官が作っていたと言われています。その後、時代とともに洗練され、実用性と華やかさを両立したものが現在の奈良団扇です。「美」と「華」と「実」奈良団扇は透かし彫りや五色に彩られた華やかさをもちつつ、実用性も兼ねています。一般的な団扇の骨組みが20~30本程度であるのに対して、60~70本もあり、力強いしなりを生み、透かしがありながらも風を巻き起こすことができるのです。途絶えかけた伝統を守る江戸時代に一度技術の伝承が途絶えた奈良団扇を復興したのが、池田含香堂の二代目です。現在までその技術やデザインを継承していますが、奈良団扇全体を見れば、戦前は10軒程度あった製造元も今では池田含香堂のみとなりました。団扇職人として技術を絶やすことなく、伝統ある製法をこれからも守り続けたいと考えています。伝統工芸をもっと知ってほしい今までの商売の形態を変革してメディアやクチコミを通した積極的な発信を行って、少しでも伝統工芸品を身近に感じてもらえるよう垣根を下げて行きたいです。

一刀彫作家、前田浩幸

一刀彫作家、昭和57年生。23歳の時に、一刀彫の伝統工芸士五代目故神箸東林に師事。その後、作家として独立。作品は「なら工藝館」(詳細は5ページ)で展示販売中。

奈良人形は、平安時代末期に春日若宮祭礼の田楽法師の笛吹笠、盃台を装飾することに用いられたことがルーツとされています。豪快で鋭い刃法で彫刻し、その上に金箔等で彩色が施されているのが特長です。工芸の世界への扉僕は小さい頃からずっと手でものを作る仕事に就きたいと思っていました。一般企業に就職してお金を貯めてから工芸の道を志しましたが、何から始めてよいものか分からず、まず扉を叩いたのが「なら工藝館」でした。そこで、後の師匠となる故神箸東林氏に出会い一刀彫の道に入門しました。そのときにタイミングよく奈良市の後継者育成事業に参加できたことも非常に大きな助けとなりました。奈良市のみなさんに感謝していますし、自分の作品で何かお返しができればと考えています。今はただひたむきに、一心に僕は今、作品を作ることがただ楽しいんです。だから、ひたすらに伝統工芸品として、また自分の中のイメージの体現として作品を作り続けたいと思っています。何より自分が木を彫り、彩色をするのが大好きなので、その思いが作品を見たり、手に取ってくれた人に伝わっていけばうれしいですね。

伝統工芸発祥の地でその技術に触れる「なら工藝館」

2ページで紹介した人間国宝北村昭斎さんの作品から新進気鋭の若手作家の作品までを一堂に集めたショールームでは、知っているようで知らなかった、意外な奈良の伝統工芸の魅力を発見することができます。また、一般の人を対象に奈良の優れた工芸技術を知り、体験できる展示会、各種教室も開催。職人の技を間近に感じることができます。長い歴史の中で磨かれた奈良の伝統工芸の素晴らしさを発見できる展示会・教室にぜひお越しください。
木画の職人でもある坂本曲齋館長が工芸に関する質問や職人になりたいという相談まで、親身になって対応してくれます。

なら工藝館
◎入場料無料
阿字万字町1番地の1電話番号:0742-27-0033
開館時間 午前10時~午後6時

奈良を代表する伝統工芸品を収蔵

  • 奈良晒
    元来は、僧や神職の衣として需要があり、江戸時代に幕府の保護を受けて盛んになったと言われています。
  • 奈良の墨
    全国シェアの約9割を誇る奈良を代表する伝統工芸です。黒さが深く、光沢の強い良質の油煙墨は海外でも人気です。
  • 赤膚焼
    磁器には見られない柔らかな風合いと優雅な雰囲気が装飾品としての価値も見いだしています。
  • 古楽面
    代表的な古面の多くは奈良にあり、伝承されている技術の美術的価値は世界的に評価されています。

奈良伝統工芸 後継者育成研修

後継者が求められている現代の伝統工芸界。市では、伝統工芸の職人になる意思を持つ人を支援する目的で、「奈良伝統工芸後継者育成研修」を行っています。奨励金を受けながら技術を磨き、3年後には職人として自立することをめざします。平成18年に始まったこの事業でこれまで5人が卒業、今年9月に3期生の3人が卒業する予定でそれぞれの得意分野で活躍しています。2期生の守田朋浩さんは育成研修に参加し、故神箸東林氏に師事。一刀彫の技術はもちろん職人としての心構えに至るまで、独立のために必要なことを数多く学び、現在は下御門町にある「町家空間」で工房を開設。作品を見た人からの注文もあり、一刀彫職人として活躍しています。

伝統工芸の制作風景を身近に見られます。海外からの観光客が見に来ることも。

伝統工芸を子どもたちに

市では世界遺産学習の一環として、市立小・中学校で伝統工芸に触れる機会を設けています。地域に住んでいる職人が工芸品を制作する様子を見たり、職人の生き方や思いを学んだりしています。

「ふるさと納税」にも奈良の伝統工芸

「ふるさと納税」のお礼の品として、今年6月から新しく伝統工芸品の赤膚焼の湯呑や茶碗、一刀彫のひな人形を追加しました。(くわしくは、市ホームページに掲載)

「ふるさと納税」は、奈良の伝統工芸への力強い応援になります。

問合せ 商工労政課(電話番号:0742-34-4741)

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