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奈良市教育委員会では、昭和54年から平城京の発掘調査を進め、大量の瓦類を収蔵しています。平成22年度には、『平城の甍』と題して、その一部を瓦の種類・歴史等のテーマに分けて紹介しました。また平成28年度には、『平城の甍2』と題して、奈良市の古代寺院の瓦に焦点を当てて紹介するとともに、この年寄贈された奈良の瓦葺師井上組の瓦も合わせて紹介したところです。
本年は神亀元年(724)2月に聖武天皇が即位して1300年にあたるとともに、11月には平城京を壮麗な都にするために、五位以上と富裕な人々に瓦葺きを奨励する太政官奏が勅裁された年にもあたります。
そこで今回の秋季特別展示では、『平城の甍3』と題して、平城京の宅地の瓦にテーマを絞り、まとまった形で公開して、聖武天皇が目指した壮麗な都、平城京の宅地の屋根を飾った瓦を広く知って頂くことを目的として開催します。
また、奈良きたまち、鍋屋町の瓦葺業井上組は明治・大正・昭和にかけて文化財建造物の瓦葺師として、松太郎・亀太郎・勝の3代にわたって活躍したことは、特別展示『平城の甍2』で寄贈瓦の一部とともに紹介しました。その後、奈良市埋蔵文化財調査センターの事業を支援している自主グループ「寧楽考古楽倶楽部」の有志による「井上組研究会」が、寄贈資料の整理・調査をすすめ、初代井上松太郎が奈良だけに限らず、全国各地の重要文化財・国宝の建造物の瓦葺きに関係した、名人といってよい人物であったことがはっきりとしてきました。そこで、瓦葺名人井上松太郎に焦点を当て、瓦を主とした寄贈資料とともに、その事績を紹介します。
井上松太郎は3代にわたり、文化財建造物等の瓦屋根修理に携わった瓦葺業井上組の創業者で、寄贈資料の整理・調査の結果、奈良にとどまらず、各地の重要文化財・国宝建造物の瓦葺きに関係した、名人といってよい人物であったことがはっきりしてきました。
寄贈された瓦だけでなく、修理工事に関わる写真・賞状・記念品も展示して、瓦葺名人井上松太郎の業績について紹介します。
主な展示品:平城薬師寺の軒丸瓦、東大寺南大門鎌倉期再建瓦、東大寺大仏殿江戸期再建瓦、明治時代の奈良県物産陳列所の瓦、昭和6・7年の東大寺転害門修理瓦、昭和6~8年の喜光寺本堂修理瓦、井上松太郎が関わった古社寺建造物の修理工事写真・賞状・記念品
井上松太郎(広陵町百済寺三重塔修理工事にて)
喜光寺本堂修理瓦(昭和6~8年)
昭和54年から実施した奈良市教育委員会による平城京宅地の発掘調査のうち、瓦類の出土が目立つ19か所について、宅地の様相とその出土瓦について、パネルも用いて展示し、多種多様な平城京の瓦について紹介します。
主な展示品:左京一条三坊十二・十三坪出土軒瓦、左京二条二坊十二坪出土三彩瓦、左京二条三坊八坪出土緑釉軒丸瓦、左京二条四坊二・七坪出土軒瓦、左京二条四坊十坪出土軒瓦、左京二条五坊北郊出土軒瓦、左京三条二坊九坪出土軒瓦、左京三条二坊十六坪出土軒瓦、左京三条三坊三・六坪出土軒瓦、左京三条四坊五坪出土軒瓦、左京五条一坊一・八坪出土軒瓦、左京五条一坊十六坪出土文字瓦、左京五条二坊十四坪出土軒瓦、左京五条四坊七坪出土保良宮同笵瓦、左京五条四坊八・九坪(播磨調邸)出土播磨産瓦類、左京五条四坊十坪出土軒瓦、左京五条四坊十五坪出土安芸国分寺同笵瓦、右京二条三坊四坪出土軒瓦、右京三条三坊一坪出土軒瓦
平城京出土軒丸瓦・軒平瓦(6348Aa-6675A)
左京二条二坊十二坪出土施釉瓦
左京五条四坊八・九坪出土播磨産瓦
奈良市埋蔵文化財調査センター 展示室
令和6年10月1日(月曜日)~11月29日(金曜日)
午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)
土曜日休館。ただし11月23日(土曜日)は開館。
日曜日、祝日及び振替休日(10月14日、11月4日)は開館。
無料