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令和5年度秋季特別展「亀甲形陶棺ー変化と地域性ー」

更新日:2023年8月24日更新 印刷ページ表示

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 赤く焼かれた亀甲形陶棺は、吉備地域に次いで近畿地方で多く出土する特殊な形態の棺であり、なかでも奈良市域の大和盆地北西部に分布が集中しています。奈良市教育委員会が40年以上にわたって行ってきた発掘調査によって、近年では亀甲形陶棺の出土する横穴墓の調査も進み、多くの成果が得られています。

 今回の展示では、奈良市の陶棺の全容をご覧いただくことを目的として、奈良市が所蔵する陶棺資料を公開します。陶棺がどのようにつくられたのか、どのような変遷を辿ったのか、考古資料としての陶棺に注目するとともに、横穴墓から出土する副葬品等を通じて、陶棺に葬られた人物像について迫ります。

展示概要

1 陶棺と横穴墓

 奈良市の陶棺の大半は、墳丘をもたず丘陵の斜面などに穴を掘ってつくった横穴墓から出土しています。横穴墓は古墳のように広い地域で確認できるのではなく限られた地域に集中しており、奈良県下では奈良市北西部で多くの横穴墓が発見されています。ここでは陶棺が出土する奈良市の横穴墓について紹介します。

主な展示品:赤田17号墓陶棺、赤田21号墓陶棺、赤田3号墓陶棺、秋篠阿弥陀谷1号墓陶棺、秋篠阿弥陀谷2号墓陶棺、秋篠阿弥陀谷4号墓陶棺

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      秋篠阿弥陀谷1号墓陶棺

 

2 亀甲形陶棺の変遷

 亀甲形陶棺の蓋と身は突帯の配置から大きくa・bの2つの系列に分かれており、それぞれが大型品から小型品へ、突帯の条数や脚の本数が多いものから少ないものへと変化していきます。このような陶棺の変遷は、赤田横穴墓群の調査成果から出現期・赤田1~4期の大きく5つの時期に分けることができます。

主な展示品:赤田5号墓北陶棺・南陶棺、敷島町2丁目出土陶棺、赤田1号墓陶棺、赤田7号墓西陶棺、中町出土陶棺

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       赤田5号墓南陶棺

3 陶棺のなかみ

 横穴墓や古墳の石室からは、棺とともに被葬者に供えた副葬品や、葬送儀礼に用いたと考えられる土器類が出土しています。特に遺体を埋葬した陶棺の棺内には、被葬者が身に付けていたと思われる耳環・玉類などの装身具や、鉄刀・鉄鏃などの鉄製品が納められています。これらは被葬者の性格を考えるうえで重要な遺物です。

主な展示品:耳環・管玉・鉄刀・刀子・須恵器・土師器(赤田5号墓)、耳環・刀子・鉄鏃(秋篠阿弥陀3号墓)、須恵器・土師器(赤田7号墓)

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    土師器・須恵器(赤田7号墓)    

4 陶棺のつくり方

 亀甲形陶棺のつくり方には、粘土帯を積みあげて棺蓋と棺身を一体でつくるものと、蓋と身を別でつくるものの2種類があります。このうち奈良市で出土する陶棺はいずれも蓋と身が別づくりです。身は底部に脚を接合した後、粘土帯を積み上げて体部を製作します。突帯を貼り付けて蓋と身を完成させた後に、それぞれ工具で半分に分割し、乾燥工程を経てから焼成しています。

主な展示品:マエ塚古墳陶棺、狐塚2号墳2号陶棺、陶栓(赤田5号墓)、陶栓(赤田8号墓)、陶栓(秋篠阿弥陀谷3号墓)​

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        狐塚2号墓陶棺

5 他地域の亀甲形陶棺

 奈良市以外にも亀甲形陶棺が数多く出土する地域として吉備地域や南河内地域が挙げられます。ここでは、他地域で出土する亀甲形陶棺について紹介します。

主な展示品:安福寺横穴墓群陶棺(写真パネル)、玉手山東横穴墓群陶棺(写真パネル)、こうもり塚古墳陶棺(写真パネル)、長浜2号墳陶棺(写真パネル)、鋸歯状突帯のある陶棺片、蓋に突起のある陶棺(赤田9号墓)、須恵器甕(赤田6号墓)

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      玉手山東横穴墓群陶棺
    (柏原市立歴史資料館提供)

6 亀甲形陶棺と土師氏

 奈良盆地北西部は、古墳の造墓や埴輪生産に関わったとされる氏族・土師氏の故地の一つと推測されており、菅原東遺跡の埴輪窯跡群の発見はそれを考古学的に裏付けています。埴輪のつくり方と共通する土師質の亀甲形陶棺がこの地域で展開するという現象は、土師氏の動向を考えるうえで決して無視できないものです。ここでは亀甲形陶棺や横穴墓と土師氏との関係が垣間見られる資料について紹介します。

主な展示品:亀甲形陶棺・円筒埴輪・形象埴輪基部(菅原東遺跡)、赤田4号墓陶棺脚部、平山古墳陶棺脚部、円筒埴輪(狐塚2号墓)、円筒埴輪(赤田7号墓)、朝顔形埴輪・人物埴輪(赤田19号墓)

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      円筒埴輪(赤田7号墓)

7 陶棺の終焉

 全長が1m程度まで小型化する7世紀中頃(赤田4期)以降、奈良市では亀甲形陶棺がみられなくなります。それと入れ替わるようにして、土器棺と形状がよく似た円筒形陶棺や砲弾形陶棺が横穴墓に埋葬されるようになります。これらの陶棺も大人の遺体をそのまま納めるには小さすぎるため、遺体を骨化させて骨だけを納める再葬容器であったと推測されます。円筒形陶棺や砲弾形陶棺を最後に、近畿地方では陶棺が姿を消します。

主な展示品:箱形陶棺(松井横穴墓群第40号墓)、円筒形陶棺(赤田9号墓)、円筒形陶棺(赤田18号墓)、砲弾形陶棺(宝来横穴墓群)

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      円筒形陶棺(赤田9号墓)

会場

奈良市埋蔵文化財調査センター 展示室

開催期間

令和5年10月2日(月曜日)~12月1日(金曜日)

開催時間

午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)

休館日

10月は土曜・祝日休館。ただし10月14日(土曜日)は開館。
11月は土曜・日曜休館。祝日(3日、23日)は開館。

入館料

無料

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