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第四回受賞者が決定しました!
奈良大和路を約半世紀にわたって撮り続け、その文化的・歴史的景観を心象風景としてとらえ続けてきた写真家・入江泰𠮷の文化・芸術への功績を記念し、写真文化の発信と新たな写真家の発掘を目的として、二年に一度開催しています。
本賞では、自らの意識を超え、「伝える」こと、歴史、文化、地域性へのこだわりが21世紀の重要なキーワードと考え、私たちの心に深く記憶される普遍的な生の眼差しを持った写真の作り手を支援していくため、未来そして世界に向けてのメッセージとして「写真集」を製作します。
写真文化の発展をめざし、老若男女だれもが気軽に参加できる写真コンテストとして開催します。
本コンテストでは多くの写真愛好家に実際に奈良へ来て、独自の視点と発想、多彩な表現方法で写真にしていただき、奈良の新たな魅力の発見につなげます。
がれきが散乱している町の中を山車を動かす人たち。その姿に神聖なものまで感じ心を動かされた反面、身内を亡くし、 家を失い、生活もままならないときに、どうして「祭り」をするのだろうかという疑問が湧きあがった。「復興」を目指して頑張る姿。
そんな簡単なヒロイズムだけでは片付けられないものがあるのではないだろうか。その奥にあるものを、知りたくなった。
(作品ステートメントより抜粋)
岩波 友紀(いわなみ ゆき)
1977年長野県生まれ、43歳。早稲田大学第一文学部、武蔵野美術大学建築学科卒。 日本の全国紙のスタッフフォトグラファーを経てフリーの写真家。現在福島県に在住し、 東日本大震災と福島第一原発事故のその後の作品制作を続ける。
[受賞歴]
2014 Critical Mass Top 50
2017 Tokyo International Photography Competition
2017 DAYS国際フォトジャーナリズム大賞 審査員特別賞
2017 NPPAベストオブフォトジャーナリズム3位
[写真展]
2016「もう一度だけ/One last hug」ニコンサロン(銀座、大阪)
2019「Blue Persimmons」ニコンサロン(銀座、大阪)
本年度の入江泰吉記念写真賞は、コロナ禍の最中の公募、審査ということで、どれくらいの出品者があるのか心配していた。にもかかわらず、結果的には微増ではあるが応募者の数が増え、内容的にも例年以上にレベルの高いものとなった。本賞に寄せる期待の大きさをあらためて感じるとともに、危機的な状況における写真家たちの底力を見ることができた。
さて、今回のグランプリを受賞した岩波友紀の「紡ぎ音」だが、二重の意味で重要な作品ではないかと思う。一つは2011年の東日本大震災から、ちょうど10年というタイミングでこの作品が成立したということ。もう一つは、これまでいくつかの賞を受賞し、個展を開催してきた彼にとって、区切りになる仕事になるということだ。被写体への向き合い方、過去・現在・未来を作品に取り込んでいこうという強い意志、表現意図とテクニックの融合、どれをとっても突き抜けている。写真集の出来栄えが今から楽しみだ。
東日本大震災による津波や原発事故による被害とその復興、多くの日本人にとって重大であるテーマを扱いながら、どこかやわらかく軽やかな印象を作品から受けた。それは過ぎた年月や薄れゆく記憶によるところも大きいと思うのだが、祭りに参加する若者や少年少女の姿や表情からも強く感じて取れる。
私事ではあるが、1993年夏、写真学生だった頃、巨大地震による大津波で被害を受けた直後の奥尻島を撮影していた。そしてその18年後の慰霊祭に訪れたとき、そこに参加している震災当時は生まれてすらいなかった中学生たちの屈託ない笑顔から、驚きや違和感と同時に美しい光景だと感じたことを思い出す。
記憶の風化は果たして罪なのだろうか?かつての風景が一変し記憶が薄れゆくとしても断ち切れない人の絆と伝統の強靭さ、負の感情は閉じ込めて未来志向で生きる姿。まだ課題も多く残るであろう復興のさなかにおいて、岩波友紀さんの作品は一筋の光明のように眩しく差し込む。
東日本大震災の被災地を丁寧に撮り続けている岩波友紀さんの写真は、被災地にこんなにも多くの祭があることを教えてくれます。祭とともに生きてきた歴史と文化がそこにある証しでもあります。津波に流されたまちでは、ふるさとの風景はすっかり変わってしまいました。それでも祭があるからこそ人々が集い、アイデンティティーを再確認しているように感じます。さらには震災で失った尊い人たちの魂との再会をはたしているのではと思わせます。
気負わず自然体で被写体に向き合う、写真からにじみ出る風合いがまた独特です。優れたドキュメンタリーであるとともに、本賞にふさわしい作品といえます。
東日本大震災から10年。今後も東北の地を歩き、岩波さんらしい視点で記録し続けていってくださることを期待します。
新型コロナウイルス感染症の蔓延により当館は4月から2ヶ月間休館に追い込まれていた。このような時期に入江賞の公募を実施するのが妥当なのか判断に迷った。結果的に杞憂だった。103点の応募があった。準備してくださっていたのだ。
家族の成長記録であったり、自宅周辺の自然や散歩道であったり、写真を撮ることでの自己確認、新しい発見の小さな旅、コロナの時代の今だからこそ写真表現の有効性を多く感じることができた。
入江泰吉記念写真賞受賞作品の岩波友紀さんの「紡ぎ音」は東日本大震災の被災地である福島県から岩手県までの太平洋沿岸の街々の祭りの写真群である。その眼は、のびやかに、しなやかに死者の生涯の地に留まるという魂と、寄り添うように帰る地を探す巡礼のように感じた。
多くの方々に本気で届けたい作品と思った。
本賞に名を冠する写真家・入江泰𠮷が1冊の写真集出版を機に一躍有名となったことにちなみ、写真集を限定1,000部製作します。受賞者にとってこれが写真家としてさらなる飛躍のきっかけとなることを期待し、皆さまからのご支援をいただきたくサポーターを募集しています。
名前、住所、連絡先(電話番号、メールアドレス)、年齢、性別、サポーター区分を明記いただき、Eメール、郵送、FAXいずれかにて下記へお送りください。
入江泰𠮷記念奈良市写真美術館 宛
(3枚組写真)
今回のなら PHOTO CONTESTは、コロナ禍の状況にもかかわらず、563点という応募がありました。大変な時期ではありますが、逆に自分の写真をしっかりと見直すいい機会になったのではないでしょうか。
第四回も今までと同様に鹿の写真がかなり多かったのですが、大賞を受賞した川口重一さんの「新たなる季節」は、その中でも抜群の出来栄えでした。クローズアップで、鹿たちの生命力の輝きをしっかりととらえています。他の作品も力作、意欲作が多く、前回と比較してもレベルはかなり上がっていると思います。
最終的には24点が入賞しましたが、決め手になったのはプリントの良し悪しでした。仕上げまできちんとチェックすることが大事になります。
次回も、いい作品が多数寄せられることを期待しています。
(3枚組写真)
平城宮跡歴史公園の大樹の下で楽器の練習をしたり、スマホを見て会話を楽しんだりする若者たちの姿が心を和ませてくれます。
観光をテーマーにした応募が多い中で、何気ない日常の風景をとらえた作品が光って見えました。緑の中で奏でる音楽はどんな音色だったのでしょうか。想像力がかき立てられる写真です。歴史ある場所での演奏は悠久の時を超え、はるか昔にも響くような気がします。
本賞公式ウェブサイト<外部リンク>に全作品を掲載しています。
2020年6月1日(月曜日)~7月31日(金曜日)
※なら PHOTO CONTEST学生の部のみ 2020年6月1日(月曜日)~9月30日(水曜日)
主催 入江泰吉記念写真賞実行委員会
共催 奈良市、一般財団法人奈良市総合財団/入江泰吉記念奈良市写真美術館
特別協力 日本経済新聞社
後援 奈良県、奈良県教育委員会、奈良市教育委員会、一般財団法人奈良県ビジターズビューロー、公益社団法人奈良市観光協会、一般社団法人橿原市観光協会
協賛 近畿日本鉄道株式会社、大和ハウス工業株式会社、奈良交通株式会社、株式会社 南都銀行、奈良トヨタ自動車株式会社、三和住宅株式会社、株式会社 トミカラー、株式会社 エヌ・アイ・プランニング、株式会社 きんでん、岡村印刷工業株式会社、株式会社 ニコンイメージングジャパン、キヤノンマーケティングジャパン株式会社、株式会社 case、shashasha、Zen Foto Gallery、CCCアートラボ株式会社、株式会社 日本カメラ、株式会社 朝日新聞出版、近鉄不動産株式会社、西日本電信電話株式会社、大阪ガス株式会社、株式会社サンエムカラー、株式会社 ホテル尾花、奈良県写真材料商組合
詳しくは公式ホームページ<外部リンク>をご覧ください